最新記事

中国

米と兔はなぁんだ? 絵文字でセクハラと戦う中国の#MeToo

2018年2月14日(水)19時30分
松丸さとみ

中国語で米は「みー」、兔は「とうー」と発音するため、この当て字が使われるようになった Supplied: The Conversation/Marcella Cheng

中国での#MeToo運動のきっかけ

#MeToo(私も)というハッシュタグを使い、セクシャルハラスメントや性的暴力の被害をソーシャルメディア(SNS)で告白したり共有したりする動きが欧米諸国を中心に広がりを見せている。

しかしオンライン上での発言が厳しく検閲される中国では、少しひねりを加えた方法で、密かに展開中のようだ。お茶碗に入ったご飯とうさぎの絵文字を使って、「MeToo」と読ませてハッシュタグにしている。

中国での#MeToo運動のきっかけを作ったのは、現在は米国在住のルゥオ・シーシーさんと言われている。中国の英語メディア「シックス・トーン」が今年1月2日に報じた内容によると、シーシーさんは2004年、北京航空航天大学で博士課程を始めたばかりのころ、教授に自動車内に閉じ込められて襲われかけた。この体験を今年1月1日付のブログで告白したところ注目を集め、同じ教授から被害にあったという学生が複数出て来たという。

1月31日付のロイター通信によると、シーシーさんの投稿を受けて大学側が調査に乗り出した。その結果、中国教育省は1月14日、セクハラの事実に基づき当該教授を教授職から免じたと発表。学生を傷つける行為は断じて許さず、セクハラ防止策を構築するとした。ロイターは、中国政府が当初、#MeTooの動きに協力的だったと伝えている。

ロイターによると教育省の発表から1週間後、50人以上の教授が連名で、学内でのセクハラを厳しく取り締まる規則を求める書簡をオンライン上で公開した。

また、オーストラリアの公共放送SBSによると、中国全土で1万人以上の学生が、セクハラを報告するシステムの導入を求めて大学宛てに公開書簡を書いた。さらに北京の大学で抗議デモ行進が行われることになった。

中国での#MeToo運動が一気に加速しそうなところだが、ここで様子が一変した。デモが突然キャンセルされたのだ。ロイターによると主催者側はキャンセル理由を明らかにしていないが、デモに参加予定だった3人が匿名でロイターに話したところ、参加しないようにと学校に告げられた、とのことだった。

その後、SNSでの#MeTooに関する投稿などは、削除されるようになったという。「1つの大学での1つの疑惑だった当初は、当局は非常に協力的だった」が、中国政府は「集団行動に発展しそうな議論は定期的に検閲している」とロイターは説明しており、今回も#MeTooが集団としての抗議活動になりそうだったことから、未然に封じ込めようとしたのではないかとみている。

米と兔の#RiceBunnyが生まれた背景


そうした状況から生まれたのが、中国語の発音に似せた、「米」と「兔」の漢字と絵文字で表現するものだ。学術系ニュースサイト「ザ・カンバセーション」によると、中国語で米は「みー」、兔は「とうー」と発音するため、この当て字が使われるようになった。そのため、米と兔の絵文字と共に「#RiceBunny」(お米のうさぎ)というハッシュタグを使って、当局の検閲をくぐり抜けているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、横浜本社ビルを970億円で売却 リースバック

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、9月は前月比+1.3% 予想を大

ビジネス

衣料通販ザランド、第3四半期の流通総額増加 独サッ

ビジネス

ノジマ、グループ本社機能を品川に移転
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中