最新記事

為替

円高急伸106円台 世界的な株価急落に動揺した投機筋がリスク圧縮へ

2018年2月14日(水)18時15分


波乱リスク収束せず、身構える市場

持ち高調整のきっかけとなった世界的な株安。震源地米国の主要指数はいったん下げ止まったようにも見えるが、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出するスキュー指数<.SKEWX>は12日、年初来最高水準へ一気に急上昇した。S&P500のオプション価格の歪みを表した同指数は「ブラックスワン指数」とも呼ばれ、不測の事態発生に備えるようなオプションの売買が増えると、指数が上昇する仕組みだ。

通貨オプション市場にも警戒ムードが見て取れる。ロイターデータによると、ドル/円のプットオプションとコールオプションの売買の傾きを示すリスクリバーサルは、1カ月物の円コールオーバー幅が「ロシアゲート」問題に揺れた昨年5月以来の水準へ到達。当面の円高進行の可能性をヘッジしようとする取引が活発に行われている様がうかがえる。

個人も急速な円高に追いつけず

円高進行時にドルを買い向かうことの多い日本の個人投資家も、急速な円高に対応できずにいる。一部の短期の参加者はドル売りで参戦しているが、今は様子見が大勢を占めるという。「この2日間の(ドルの)下げが速いので、今の段階では様子を見ている。106円台にはチャート上の節目もないので、105円台にならないとまとまった買いは出てこないだろう」(上田ハーローの外貨保証金事業部長、山内俊哉氏)との見方が出ていた。

112円近辺から水準を切り下げていく段階で、個人投資家のドル買いポジションが積み上がったとの指摘もある。「110円、109円と節目を割れるタイミングで買いが入っていた。これ以上下がっても買い余力がなく、手が出せない人もいる」(外為アナリスト)という。

すでにポジションが整理される動きも一部でみえており、106.80円のところに損失確定のドル売りオーダーが観測される。

目先の動きを占う上で警戒されているのが、きょうこの後の米1月消費者物価指数(CPI)だ。市場予想を上回り、インフレ加速が意識されれば、米長期金利が上昇し、株価が再び不安定化する可能性があるためだ。「金利差を見ればドルも買いやすいが、もう少し市場が落ち着くのを待ちたい」(国内金融機関)との声が出ている。

(基太村真司 杉山健太郎 編集 橋本浩)

[東京 14日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アフガン北部でM6.3の地震、20人死亡・数百人負

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国

ビジネス

仏製造業PMI、10月改定48.8 需要低迷続く

ビジネス

英製造業PMI、10月49.7に改善 ジャガー生産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中