最新記事

中国

南シナ海の支配強化する中国 戦略なき米軍パトロールを逆手に

2018年1月26日(金)09時24分

1月23日、米国防総省は、中国が領有権を主張する南シナ海の岩礁や島の近海で最近行った哨戒活動を、大ごとにしたくない構えだが、中国政府は大きく反発。写真は南沙(スプラトリー)諸島のミスチーフ礁。フィリピン軍機から2015年5月撮影(2018年 ロイター)

米国防総省は、中国が領有権を主張する南シナ海の岩礁や島の近海で最近行った哨戒活動を、大ごとにしたくない構えだ。だが中国政府は大きく反発。専門家からは、中国がこの海域で実効支配を一層強化する正当化をもくろんでいるとの見方が出ている。

中国政府高官は、米国が行った直近の「航行の自由」パトロールを公表。米海軍のミサイル駆逐艦「ホッパー」が先週、中国が領有権を主張する南シナ海のスカボロー礁(中国名:黄岩島)の12カイリ以内の海域を航行したとして抗議した。スカボロー礁はフィリピンの西に位置し、同国政府も領有権を主張している。

米軍による哨戒活動が、米政府ではなく中国政府により公表されたのは最近では2度目だ。こうした情報は、以前は米側が発表またはリークしていた。

米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の安全保障専門家ボニー・グレーザー氏は、トランプ米政権は定期的かつ目立たせずにパトロールを行う方針だが、中国側はこれを逆手に取って軍事的な目標を前進させようとしていると指摘する。

「それ以外の結論は考えにくい。トランプ政権は、こうしたパトロールを実行しながら、南シナ海で中国側の行動をどこまで許容するか方針を固めていない。そして、中国はそれを見抜いているようだ」と、同氏は言う。

中国外務省の陸慷報道局長は声明で、南シナ海での「主権を断固守るため必要な措置」を講じると述べた。

地域の外交官や安全保障専門家の一部は、この声明が意味するところは、中国軍の活動強化や南沙(スプラトリー)諸島で中国が拡大する施設の早急な軍事化だと受け止めている。

米政府側は、航行の自由パトロールは国際法執行のため「定期的」に実施しているものだとして、中国を念頭に置いた発言は避けた。だが中国側は、米政府による挑発だとして素早く反応した。

中国共産党機関紙「人民日報」は22日、最近の平和と協力関係を乱し、「いたずらに問題を起こそうとしている」として米国を批判。中国は、戦略的に重要なこの海域で今こそ存在感を高めなければならないと主張した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中