最新記事

中国

「チャイナ・イニシアチブ」に巻き込まれている日本

2018年1月17日(水)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2015年、二階俊博自民党総務会長(当時)率いる3千人訪中団と面会した習近平国家主席 Kim Kyung-Hoon-REUTERS

昨年末、「中国共産党と世界政党ハイレベル対話会」が北京で開催された。各国政府のど真ん中の人物に焦点を当てて「中国礼賛」へと洗脳していく。日本は中国の戦略にまんまと嵌って日中関係改善と喜んでいるが......。

中国が仕掛ける心理戦

昨年11月30日から12月3日にかけて「中国共産党と世界政党ハイレベル対話会」(以下、対話会)が北京で開催され、120数カ国の300以上の政党から成る600人の幹部たちが一堂に集まった。これは世界史上初めてのことだと、中国は胸を張っている。主宰したのは中共中央対外聯絡部。

これまではそれほど大きな活動をしてこなかったが、第19回党大会が終わり、習近平政権第二期に入ると、突然「対外聯絡部」の存在が大きく前面に打ち出されるようになった。それは「中国共産党」そのものが、世界最大の政党(党員数、約9000万人)として世界各国の政党に影響を与えようという戦略を実行するためである。中国が国家として他国に介入するのは「越権だ」という誹謗を受け得るだろうが、一つの政党として他国の政党に声をかけて連携していくのは非難される筋合いのものではないという論理で動いている。

世界各国の政権与党幹部に焦点を絞って熱烈歓迎し、相手国を親中に持っていくべく洗脳し、「中国礼賛」という心情を植え付けていこうという大戦略である。心理戦とも言える。

チャイナ・イニシアチブとは何か

対話会開会の辞は習近平国家主席自身が行い、3日に会議は閉幕したが、それらを総括する形で、中国政府の通信社である新華社の電子版「新華網」は「北京倡儀」に関する全文を掲載した。

それを読むと、中国が世界制覇を成し遂げるための巨大戦略が見えてくる。したがって、この「北京倡儀」を「チャイナ・イニシアチブ」と名付けることとしよう。

一見、参加者の心を納得させ感動させるスピーチの中に、きちんと中国を礼賛せずにはいられないような心理を醸成する「核」を隠し込んでいる。全文を翻訳するのは避けるが、日本が中国のこの戦略にまんまと嵌っていく様子が手に取るように分かるので、肝心の部分だけを抽出してご紹介したい。

1. 人類の運命共同体を構築するために、「習近平による中国の特色ある社会主義思想」を実現し、ともに一帯一路の建設に携わるために、中国の貢献と各国政党間の連携を強化していきたい。

2. テロやネットの安全あるいは気候変動など、これまでとは異なる脅威が世界に蔓延している。しかし平和と安定は依然として私たちの最大の課題だ。深刻で複雑な国際情勢の中で、いかなる国家も自国単独で人類が直面しているさまざまな挑戦に対応することは出来ないし、どの国も閉鎖的な孤島の中に閉じこもって問題解決に当たることは出来ない。したがって我々は「人類の運命共同体」を形成していかねばならないのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中