最新記事

中国

中国、年内に史上初の「月の裏側」着陸目指す:昆虫と植物を送って「生態系」確立も

2018年1月10日(水)17時15分
高森郁哉

中国は月に昆虫と植物を収めたコンテナ持ち込む計画を進めている Stringer- REUTERS

中国は2018年中に、月の裏側へ無人探査機を送り込む計画を進めている。月の裏側への軟着陸が成功すれば、史上初の快挙となる。

また、このミッションでは昆虫と植物を収めたコンテナを月面に持ち込み、月面上で簡素な生態系を確立することも目指すという。人民日報オンライン版(人民網)、ユニバース・トゥデイなどが報じた。

月の裏側は「未踏の地」

中国は2003年から「嫦娥(じょうが)計画」と呼ぶ月探査計画を進めてきた(嫦娥とは、古代中国の神話に登場する月の女神の名前)。2013年12月の「嫦娥3号」ミッションでは、旧ソ連、米国に続き、探査機の月面軟着陸を成功させた第3の国となった。

なお、地球の衛星である月は、自転周期と公転周期が同期しており、常に同じ面を地球に向けている(この状態は「潮汐固定」と呼ばれる)。地球から直接見えない月の半球、いわゆる「月の裏側」は、地上との通信が困難なことから、探査機が着陸したことはこれまで一度もない。

「嫦娥4号」ミッションの概要

こうした通信上の問題を克服するために、今年の「嫦娥4号」ミッションではまず、6月に長征5号ロケットで中継衛星を打ち上げ、月と地球の引力が釣り合う地点であるラグランジュ点(L2点)に衛星を投入。ラグランジュ点ではほぼすべての時間で月の裏側と地球を同時に観測できることから、地上の拠点と月面上の探査機の通信を中継することも可能になる。

その約6カ月後、月面着陸船と月面探査車からなる嫦娥4号を打ち上げる。着陸地点は、月の裏側の南極付近に位置する、直径約2500kmの巨大なクレーター「南極エイトケン盆地」を予定。この盆地内で南極点に近いクレーター内部には、太陽光が当たることがない「永久影地域」があり、そこには氷が存在すると考えられている。

簡素な生態系の確立も目指す

同ミッションではまた、ジャガイモ、シロイヌナズナの種、カイコガ(蚕蛾)の卵を収めたアルミニウム合金製のコンテナも月面に送り込む。コンテナは、極端な高温や低温を防ぐための断熱材や、植物と昆虫の成育を促進する光源も備える。

カイコガは卵からふ化して成長する過程で二酸化炭素を排出し、一方のジャガイモとシロイヌナズナは光合成を通じて酸素を放出する。

こうしてコンテナの中で簡素な生態系を確立することに成功すれば、将来的に他の惑星で動物の飼育や植物の栽培を行う拠点「エコ・ベース」の実現につながる貴重なデータが得られるのでは、と期待されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロ外相、イエメン攻撃の即時停止と対話要請 米長官と

ワールド

習主席、中国EU首脳会議の招請辞退と英紙報道 外交

ワールド

ケロッグ米特使の職務限定、ロシアが「ウクライナ寄り

ワールド

米がフーシ派に大規模攻撃 商船攻撃に強硬措置 31
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 2
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴された陸上選手「私の苦痛にも配慮すべき」
  • 3
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 4
    エジプト最古のピラミッド建設に「エレベーター」が…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「天然ガス」の産出量が多い国は…
  • 6
    自然の中を90分歩くだけで「うつ」が減少...おススメ…
  • 7
    中国中部で5000年前の「初期の君主」の墓を発見...先…
  • 8
    鈍器で殺され、バラバラに解体され、一部を食べられ…
  • 9
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 10
    ピアニスト角野隼斗の音を作る、調律師の知られざる…
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 8
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中