最新記事

ネット

野生動物との自撮りはノー

2018年1月5日(金)18時00分
マリア・ペレス

ソーシャルのトレンドで野生動物と自撮りをする観光客が急増 valentinrussanov-iStock.

<「インスタ映え」を狙う人間のエゴで動物たちは大迷惑>

ここ数年、ソーシャルメディアで目につくトレンドの1つが「野生動物とのツーショット自撮り」。パリス・ヒルトンやアリアナ・グランデらセレブもやっているとあって、ライオンやナマケモノ、ゾウと一緒にポーズを取る観光客が急増中だ。世界動物保護協会によると、14年以降でこの手の画像の投稿は292%増えたという。

このブームに待ったをかけたのが、写真共有SNSのインスタグラムだ。ユーザーが「#koalaselfie(コアラとの自撮り)」「#lionselfie(ライオンとの自撮り)」といったハッシュタグを検索すると、「動物や環境に有害な行動を奨励する投稿との関連が疑われるハッシュタグを検索中です」という警告メッセージが表示される。併せて、野生動物との接し方を解説した動物保護団体などのURLも現れる。

無神経な自撮りは野生動物にとっては非常に迷惑な行為になりかねない。

17年8月にはスペインの海岸に赤ちゃんイルカが迷い込み、集まってきた海水浴客が大騒ぎ。撮影したり触ったりしたために、イルカはストレスでショック死した。この事件についてはソーシャルメディア上でも怒りの声が広がった。

ほかにも珍しい動物が違法に捕獲されて檻に入れられるなど、人間の慰みものにされるケースが後を絶たない。野生動物とのツーショット自撮りは、そうした状況を肯定し、さらに拍車を掛けることにもなりかねない。

インスタグラムはどのハッシュタグを検索すると警告が出るか明らかにしていないため、ユーザーはランダムに検索するうちにいきなり警告を目にすることになる。珍しい動物や角や牙などの違法取引に関連したハッシュタグでも警告が表示されるという。

「野生の動植物は、私たちのプラットフォームの重要な一部だ」と、インスタグラムの広報担当エミリー・ケインはメディアに語った。「今はコミュニティーに一層の自覚が求められており、私たちも教育的な役割を果たしたい」

どんな行為が虐待になるか、人間の都合ではなく動物の側に立って考える――そんな当たり前のことができないのは残念な話だ。

<本誌2017年12月26日号掲載>


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

米政府機関の閉鎖、経済に「不必要なリスク」=NEC

ワールド

ミリー米統合参謀本部議長が退任、後任はブラウン氏 

ビジネス

米個人消費支出、8月は前月比0.4%増加

ワールド

米民主ファインスタイン上院議員が90歳で死去、在職

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:日本化する中国経済

特集:日本化する中国経済

2023年10月 3日号(9/26発売)

バブル崩壊危機/デフレ/通貨安/若者の超氷河期......。失速する中国経済が世界に不況の火種をまき散らす

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も

  • 3

    ワグネル傭兵が搭乗か? マリの空港で大型輸送機が爆発、巨大な黒煙が立ち上る衝撃映像

  • 4

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 5

    イラン製「カミカゼドローン」に日米欧の電子部品が.…

  • 6

    日本の他殺被害者のうち0歳児が断トツで多い理由

  • 7

    中国経済の「日本化」が、日本にもたらす大打撃

  • 8

    ロシア軍スホーイ戦闘機など4機ほぼ同時に「撃墜」され…

  • 9

    本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオ…

  • 10

    巨大なクマを飼い猫が撃退! 防犯カメラが捉えた「…

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    最新兵器が飛び交う現代の戦場でも「恐怖」は健在...「スナイパー」がロシア兵を撃ち倒す瞬間とされる動画

  • 3

    本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオに映った不可解な行動に、「影武者説」が再燃

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    マイクロプラスチック摂取の悪影響、マウス実験で脳…

  • 6

    これぞ「王室離脱」の結果...米NYで大歓迎された英ウ…

  • 7

    「ケイト効果」は年間1480億円以上...キャサリン妃の…

  • 8

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 9

    ロシア黒海艦隊、ウクライナ無人艇の攻撃で相次ぐ被…

  • 10

    J.クルーのサイトをダウンさせた...「メーガン妃ファ…

  • 1

    イーロン・マスクからスターリンクを買収することに決めました(パックン)

  • 2

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 3

    <動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部隊がロシア軍の塹壕に突入

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    コンプライアンス専門家が読み解く、ジャニーズ事務…

  • 6

    「児童ポルノだ」「未成年なのに」 韓国の大人気女性…

  • 7

    「これが現代の戦争だ」 数千ドルのドローンが、ロシ…

  • 8

    サッカー女子W杯で大健闘のイングランドと、目に余る…

  • 9

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 10

    ロシア戦闘機との銃撃戦の末、黒海の戦略的な一部を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中