最新記事

中国政治

「中国のエルサレム」浙江省・温州 当局の弾圧と闘うキリスト教徒

2018年1月4日(木)12時29分

12月24日、キリスト教徒コミュニティーを多く抱え「中国のエルサレム」とも呼ばれる中国南東部浙江省の都市・温州は、子ども向けの宗教教育を巡る中国指導部と敬虔(けいけん)な信者たちの対立激化の最前線となっている。写真は温州の教会。18日撮影(2018年 ロイター/Christian Shepherd)

キリスト教徒コミュニティーを多く抱え「中国のエルサレム」とも呼ばれる中国南東部浙江省の都市・温州は、子ども向けの宗教教育を巡る中国指導部と敬虔(けいけん)な信者たちの対立激化の最前線となっている。

公式には無神論の立場をとる中国共産党は、キリスト教の影響力を抑制するための取り組みを強めており、信仰教育に対する制限を強化し、キリスト教の「欧米風」な思想に警告を発している。

とはいえ、温州のキリスト教社会の決意の固さから見て、国内6000万人に上る信者の子どもたちに対して共産党が統制を及ぼそうとしても苦労するだろう、と同教徒らは語る。

温州では、今年に入って、キリスト教会の日曜学校が当局により禁止された。だが、子どもたちにイエス・キリストや聖書について学ばせようという親たちの決意は固い。

温州の各教会は、個人宅やその他の場所を使って子どもたちを教育するようになった。現地の信者らがロイターに語ったところでは、日曜学校は教育ではなく託児サービスと称するところもあれば、毎週土曜日に変更したところもあるという。

微妙な問題ゆえ、Chenとだけ名乗る信者の親は、彼女の家では「大切なのは信仰で、成績は二の次」だと言う。

クリーム色の毛皮コートをまとった小奇麗ないでたちで、大きなターコイズの指輪をはめたChenさんは、温州に多い、富裕な信者の1人だ。国家による教育は、十分な道徳的・精神的指導に欠けているため、子どもたちは聖書の授業に出席しなければならない、と彼女は語る。

「今日の若者のあいだでは麻薬、ポルノ、賭博、暴力が深刻な問題となっており、ビデオゲームの誘惑も非常に強い」と彼女はロイターに語った。「いつも子どもの傍らにいるわけにもいかない。(どういう行動が正しいのか)子どもに理解させるには、信仰に頼るしかない」

状況を直接知る情報提供者3人によれば、温州の一部地区では、8月以来、公式の命令により日曜学校が禁止されているという。

キリスト教系のニュースサイト「ワールド・ウオッチ・モニター」が9月報じたところでは、浙江・福建・江蘇・河南の各省、そして内蒙古自治区では、子どもたちがサマーキャンプなどの信仰活動に参加することが禁止されているという。

こうした政策が地方政府主導なのか、中央政府の指令によるものかも定かではない、とロイターの取材に応じた情報提供者は話す。また中国国内で他の宗教についても同様の禁止措置があるかどうかも分からないという。

9月には、宗教教育に対する国家の監督を全国規模に拡大する新たな規則が発表された。当局者によれば、党に忠実な新世代の宗教指導者を生み出す試みだという。

中国の国家宗教事務局と温州市政府広報部に対してコメントを求めるファクスを送ったが、回答は得られなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体開発グロックを200億

ワールド

北朝鮮の金総書記、24日に長距離ミサイルの試射を監

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中