最新記事

貿易

決裂したWTO閣僚会議 米通商代表「重要分野交渉は再スタート必要」

2017年12月15日(金)09時40分

12月14日、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表(写真)は、前日までブエノスアイレスで開かれた世界貿易機関(WTO)閣僚会議が米国などの反対で閣僚宣言を採択できずに閉幕したことを受け、国益を追求した一部の国々の勝利との見方を示した。写真は11日ブエノスアイレスで撮影(2017年 ロイター/Marcos Brindicci)

米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は14日、前日までブエノスアイレスで開かれた世界貿易機関(WTO)閣僚会議が米国などの反対で閣僚宣言を採択できずに閉幕したことを受け、国益を追求した一部の国々の勝利との見方を示した。

ライトハイザー代表は14日に出した声明で、今回の閣僚会議について「WTOの行き詰まりが解消された節目と記憶されるだろう」と称賛。「数少ない加盟国が反対するために、同じ意見の加盟国による行動が妨げられることのないよう、WTOは重要分野については新たなスタートを切る必要があると、多くのメンバーが認識した」と述べた。

ただ、同代表の好意的な評価とは対照的に、2年に1度のWTO閣僚会議で電子商取引(eコマース)や漁業補助金禁止といった比較的小さなテーマでも合意できなかったことに落胆する参加者もいた。

閣僚宣言の採択には加盟する164カ国・地域の全会一致が必要。

ライトハイザー代表は閣僚会議の冒頭にWTOへの厳しい批判を展開し、新ルールの交渉は不可能だとしていたものの、新たなeコマースの通商ルール策定や食の安全に関する不当な貿易障壁の解消で一部の加盟国と意見が一致した。また、日本や欧州連合(EU)と連携し、中国を念頭に、市場を歪める貿易慣行や生産設備の過剰を招く政策を是正していく方針を表明した。

ライトハイザー代表は閣僚会議が閉幕する前にブエノスアイレスを離れた。

今回、USTR代表がWTO交渉の新たな方向性を示したことで、トランプ大統領の公約通りに米国がWTOから離脱するとの懸念は和らぐ可能性がある。

[ワシントン 14日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリアの包括的な無宗派の統治への移行望む=米国務長

ワールド

米、シリア情勢注視 反体制派・イスラエル・トルコ・

ビジネス

米単位労働コスト、第3四半期改定値は0.8%上昇に

ワールド

イスラエル、シリア南部に防衛地帯設置へ ゴラン高原
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 2
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 3
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新研究が示す新事実
  • 4
    無抵抗なウクライナ市民を「攻撃の練習台」にする「…
  • 5
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    韓国大統領の暴走を止めたのは、「エリート」たちの…
  • 8
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 9
    ジンベエザメを仕留めるシャチの「高度で知的」な戦…
  • 10
    ティラノサウルス科の初記録も!獣脚類の歯が明かす…
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 8
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 9
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 10
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中