最新記事

中国

習近平、「南京事件」国家哀悼日に出席――演説なしに関する解釈

2017年12月14日(木)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

80周年記念という意味では、2016年の政治局委員より一つ上の政治局常務委員にしたいところだが、ちょうどいいことに党大会が終わったばかりで「元常務委員」がいる。おまけにまだ来年の3月に開催される全国人民代表大会までは、国務院(中国政府)系列からすれば、まだ現役の者が複数いる。だから兪正声(元党内序列4位)あたりにした。張徳江(元党内序列3位)でもいいが、前年の政治局委員との職位の差を考えれば、演説をする者の職位はこの辺りが妥当だろう。

しかし節目の80年記念なので、習近平は一応、顔は出す。

筆者は、そのように解釈していた。

だから日本の報道の解釈には、どうにも納得がいかない。そこで、いっそのことと思い、中国政府高官に聞いてみた。すると、以下のような、激しい口調の回答が戻ってきた。

――日本は何をバカバカしいことを言っているんだ! 勝手に「自分はこう思う」という個人的見解を述べるのは、自由と言えば自由だろうが、習近平が演説しなかったことに対して、少なくとも「日本への配慮」などと解釈することは笑止千万! もし配慮しているならば、そもそも出席しないだろう。国家記念日と決定した最初の年に習近平が演説するのは、決定した最高責任者としての責務があろうが、そのあと出席していないのに、なぜ突然演説までしなければならないのか?出席しただけで十分だ。もし演説しなかったことを「日本に対する配慮」などと言うのなら、これまで出席しなかった習近平が出席したことを何と位置付けるつもりか。それこそは「日本に対して抗議を示したいからだ」とは思わないのか?日中韓首脳会談が、まるで今年中に日本で開催されるようなことを日本では報道していたようだが、それがなぜ実現しなかったと思っているのか。中国がどんなに反対しても日米韓合同軍事演習を続け、米軍のTHAADを韓国に配備して中国の安全保障を脅かすようなことをアメリカはしているが、日本はそれを全面的に支持しているからだ。中国は今、そのことと闘っている。どんなことがあっても、この日米韓合同軍事演習を止めさせ、対話交渉に導いてやる。日米韓の協力が軍事同盟になるようなことがあったら中国は絶対に許さない。これに関しては一歩も引くつもりはない。だから韓国と合意を取り付けたばかりだ。安倍は憲法改正をして日本が軍国主義国家になる方向に動こうとしているではないか。そんな日本に、なぜ習近平が配慮などしなければならないのか?! いい加減なことを言うな!

まるで機関銃の引き金を引いたように言葉は留まるところを知らず、いつまでも激しく鳴り響いた。

毛沢東は「南京事件」に触れることさえ許さなかった

そもそも建国の父である毛沢東は、「南京事件」を記念したことがないし、口にするのも教科書に載せるのも許さなかった。

なぜか――?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル

ワールド

香港警察、手配中の民主活動家の家族を逮捕
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中