最新記事

北朝鮮情勢

国連事務総長「北朝鮮、対話」を──孤立するアメリカ...そして日本

2017年12月11日(月)08時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

米大統領、エルサレムをイスラエルの首都に認定 Kevin Lamarque-REUTERS

国連事務次長の訪朝は、中国に取り込まれている事務総長の意向通り、「対話交渉」に終わった。トランプ大統領のエルサレム首都化宣言でも国連安保理はアメリカを非難。北朝鮮包囲網にひびが入り、日本にも影響する。

ニューヨークの「多維新聞」が

ニューヨークに本拠地を置く中文メディアで、中国政府関係者が最も「こっそり」読んでいるウェブサイトの一つに「多維(Duo-Wei)新聞」というのがある。

筆者が12月6日に本コラムで「国連事務次長訪朝の背後に中国か?」を書いたところ、それを中国語に翻訳して、多維新聞が「国連事務次長訪朝の黒幕」というタイトルで筆者の記事をそのまま転載している。但し、「日本のメディアの雅虎(ya-hu)(ヤフー)が報道した」という形であって、筆者の名前はない。他のウェブサイトも、この記事を転載。

情報はこのようにして広がっていくのだろうと思うが、中国政府関係者が必ず読むことを知っているので、個人名が書いてないことは、ある意味では幸いなことかもしれない。
 

日本経済新聞が

そうこうしている内に、日本経済新聞が9日、<国連事務総長、北朝鮮「対話による解決を」幹部派遣>という記事の中で、日経独自の取材結果を報じているのを発見した。高橋里奈という記者が、国連本部でグテーレス国連事務総長を直接取材したらしい。それによれば、グテーレス事務総長は、

――フェルトマン事務次長(政治局長)が北朝鮮を訪問したことについて「非核化を達成するための環境をつくり、事態が手に負えなくなる前に対話に基づく外交的、政治的解決を目指すものだ」と説明した。

とのこと。グテーレス事務総長はさらに、

――危機打開に向けて対話路線を構築すべきだとの認識を示した。緊張の緩和に向けて「建設的、オープンで有意義な対話により、非核化を実現しなければならない」と指摘。「我々は対話を促進するために、あらゆることをする」と力を込めた。

と記事にはある。これはまさに中国が主張する方向性と完全に一致している。やはり先般の筆者の推論は間違っていなかったことを示してくれており、その意味ではホッとしている。こういう直接取材の情報は非常にありがたい。

中国メディアは

中国メディアは、「5日から9日にかけて訪朝したフェルトマン国連事務次長と北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)の会談により、北朝鮮と国連との間で、さまざまなレベルにおける交流を通した意思疎通を定例化することが合意された」と報道した。北朝鮮の「朝鮮中央通信」の情報に基づくとした。

フェルトマンは9日、北京経由でアメリカに帰国したが、中央テレビ局CCTVは、フェルトマン訪中期間と重なる形で、4日から8日にかけて米韓が合同軍事演習を行なっていたことを紹介し、北朝鮮が「アメリカの対北朝鮮敵視政策こそが緊張の原因を作っている」と、アメリカを批判していると解説した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中