最新記事

自動車

EVとAIで人気のテスラ ささやかれる「自動車製造を甘く見た」ツケ

2017年12月10日(日)17時30分

最低3万5000ドル(約395万円)からの価格帯にある同社初の大衆車「モデル3」製造にあたり、高品質な車を大量生産する能力を有するかどうかが、テスラの今後を左右すると専門家は指摘する。

テスラはこれまで通年で黒字化したことがなく、四半期で10億ドルの損失を計上している。新たな投資を獲得するか、欠陥に対して厳しい反応が予想される主力市場において販売台数を大幅に拡大しない限り、存続が難しい状況だ。

「最上級の仕様を備えた、胸躍る製品を生み出すという点で、テスラの能力を疑ったことはない。しかし、新しい何かを生み出すことと、それを実際に完璧に大量製造することは別問題だ。後者について、テスラは、まだその実現に至っていない」モーニングスターのアナリスト、デビッド・ウィストン氏はそう記している。

テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、高度に自動化された新組立ラインを導入し、「モデル3」においてよりシンプルな設計を採用することで、同社が「地上で最も優れた製造企業」になると胸を張る。だが、製造上の問題により、大きな期待を集めている新型セダンの提供は予定よりも遅れている。

新車発売に予想外のトラブルはつきものだ。とはいえ、既存車種の「モデルS」や「モデルX」につきまとう欠陥は、テスラがいまだ基本的な製造技術の獲得に苦労していることを示している、と現旧従業員は話す。

同社内では「キックバック」と呼ばれているが、こうした欠陥車両は、へこみや傷といった些細な不具合や、シートの機能不全などの複雑なトラブルを抱えていたりする場合がある。簡単なものであれば工場内ですぐに解決してしまうという。

面倒なトラブルの場合、テスラの屋外駐車場に運ばれ、修理を待つことになる。こうした「中庭」と呼ばれる駐車場の1つでは、修理待ち車両が2000台を超えることもあるという。テスラはロイターに対し、こうした「修理待ちスペース」の存在を否定している。

ロイターが取材した現旧従業員9人には「モデルS」「モデルX」の組立てや品質管理、修理の経験を持つ元シニアマネジャーも含まれる。会社側から秘密保持契約書への署名を求められているため、全員が匿名で語った。

このうち4人は解雇されており、そのうち2人は、先月テスラが「勤務成績の不振」を理由に解雇した数百人に含まれる。ロイターの取材に応じた解雇従業員は、自らの業績が劣っていたことを否定する。

明かされたテスラ社内の品質データについて、ロイターは独自の裏付けを得ていない。

欠陥の内容について、「ドアの閉まりの悪さ、バリ残り、部品欠落など、何でもありだ。ぐらついていたり、水漏れしたり、何もかもだ」と語るのは、また別の元スーパーバイザーだ。「『モデルS』は2012年から作っている。それなのに、なぜまだ水漏れが起きるのか」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロン氏、プーチン氏のイスラエル・イラン危機仲介

ワールド

原油先物続伸し3%超上昇、イラン・イスラエルの攻撃

ビジネス

ECB、2%のインフレ目標は達成可能─ラガルド総裁

ワールド

トランプ氏、イラン・イスラエル和平を楽観視 プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中