最新記事

全固体電池の「点火」に挑む日特、EV時代生き残り図る部品各社

2017年12月29日(金)09時53分


持ち前のセラミックス技術を活用

全固体電池とは、現在主流のリチウムイオン電池の電解質を可燃性のある液体から固体に変えた電池。リチウムイオン電池は液漏れや発火の恐れがあるのに対し、全固体電池は安全性が高く、大容量・高出力・長寿命などが実現でき、航続距離を延ばすことも可能だ。

全固体電池はトヨタやホンダ<7267.T>、独BMWなどのほか、20年までにEVを発売すると宣言した家電メーカーの英ダイソンも開発中だ。TDK<6762.T>や村田製作所<6981.T>も開発しているが、両社は高い安全性が求められる車用ではなく、モノがインターネットでつながるIoT機器やウェアラブル通信端末向けを想定している。

トヨタが20年代前半の実用化を目指して開発中の全固体電池では、固体電解質に導電性の高い硫化物を用いる。硫化物は水分に触れると毒ガスの硫化水素が発生する。トヨタでは「その問題は解決済み」(同社幹部)としているが、硫化物の安全性を懸念する声もある。

一方、日特は固体電解質に酸化物を使い、硫化物のようなガスを出さない。これまで酸化物では硫化物のように電池を薄くして大きくすることが難しかったが、同社は得意のセラミックス技術を活用して見つけた特殊な物質を酸化物の固体電解質に混ぜることで、硫化物の場合と同じように大型化できることを突き止めた。

同社はTDKが開発した縦4.5ミリ、横3.2ミリの電池よりも大きい10センチ角の電池を開発した。

20年代にはリチウムイオン電池超える性能に

日特の電池の課題は性能に結び付くエネルギー密度の向上だ。小島氏は「全固体電池では、トヨタの電池が最高性能と一般的にいわれており、酸化物系はまだその性能に達していない」と話す。日特は現在のエネルギー密度を公表していないが、開発に携わる研究員の彦坂英昭氏は「まずは20年くらいまでにリチウムイオン電池と同じ性能にし、20年代には超える性能にしたい」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、8月は5.4万人増 予想下回る

ビジネス

米の雇用主提供医療保険料、来年6─7%上昇か=マー

ワールド

ウクライナ支援の有志国会合開催、安全の保証を協議

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中