最新記事

インタビュー

ゴア元副大統領「最悪の事態は避けられる」

2017年11月24日(金)16時30分
大橋 希(本誌記者)

世界を飛び回り、気候変動問題について人々に講演しているゴア ©2017 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

<技術の進歩もあり、地球の未来について悲観していない、と語るゴア>

映画『不都合な真実2:放置された地球』で、温暖化対策という急務を世界中の人々に訴える熱い姿を見せたアル・ゴア元米副大統領に、本誌・大橋希が聞いた。

――前作よりもあなたの活動に焦点を当てた内容になっている。

作品の方向性は監督2人が決めていった。そのスタイルは1作目のデービス・グッゲンハイム監督に比べて、より「シネマベリテ」(「真実の映画」の意でインタビューを多用するドキュメンタリー手法)だった。非常にいい仕事をしてくれたと思う。

たぶん私が編集の最終決定権を持たないのがよかった。私の中では自分はまだ若くて髪は黒く、もっとハンサム。ぬれた靴下を脱ぎ捨てる場面なんて、自分ならカットしただろう(笑)。

――映画にあるように、気候変動問題に取り組む人材の育成セミナーを世界中で開いている。

日本ではまだ実施していないが、いつか東京でやりたい。次の予定はメキシコシティ。北京、デリー、ヨハネスブルク、深圳、マニラなどでも予定している。

――大統領選に勝利直後のドナルド・トランプに会いに行く場面もある。どんな話をしたのか。

内容は公にしていない。そのほうがいいと思うから。
 
パリ協定に残留するよう説得はした。彼が正気に戻ってくれるかもしれないと期待したからだが、それはかなわなかった。

でも彼が何と言おうと、何とツイートしようと、われわれアメリカとしてはパリ協定を守るつもりだ。カリフォルニアやニューヨークをはじめ多くの州、数百の都市、数千の企業がその意思表示をしている。

アメリカが離脱するとしても、正式に可能になるのは20年の大統領選の後のこと。トランプはいま非常に孤立しているし、彼が温暖化対策の進歩のペースを落とそうとしても限界がある。

――最近の国連の報告書で、地球の気温は今世紀末までに3度上昇する可能性が高いとされた。

気候変動は人類最大の危機で、10年前より明らかに異常気象は激しく、頻繁になっている。

それでも(パリ協定の目標の)2度以内に抑えられる可能性はまだある。「かなり長くかかると思っていることも、一度起こると一気に流れだす」という有名な米経済学者の言葉があるが、現状がそれに当てはまるのではないか。太陽光発電や電気自動車、LEDなどの技術に劇的な改善が見られる。気候変動による最悪の事態は避けられると、私は楽観しているよ。

<本誌2017年11月21日発売最新号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ

ワールド

野村、今週の米利下げ予想 依然微妙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中