最新記事

米中関係

北朝鮮危機、ニクソン訪中に匹敵する米中合意の可能性

2017年10月17日(火)18時01分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

将来的に米中の取引が機能するという保証はどこにもない。中国の北朝鮮に対する影響力は過大評価されているとか、米中が取引を結べば北はそれを敵対行為とみなし、ますます核開発に傾倒する結果になるという意見もある。韓国軍が戦力を増強したとはいえ、金政権の存続中に駐韓米軍を大幅に撤退させるなど考えられないという見方もある。彼らは共通して、アメリカが日本や韓国を怖がらせずに最大限できるのは、北緯38度線の北側に「米軍を派遣しない」ことに尽きると信じている。

もう1つの問題は経済だ。対中強硬派で大統領首席戦略官だったスティーブ・バノンは、8月に更迭されてホワイトハウスを去ったが、トランプは今も貿易分野で中国への強硬姿勢を鮮明にしており、すでに北朝鮮と取引する中国企業に追加制裁を科している。トランプの一部の側近は、米中が経済関係で対立を深める間は、北朝鮮問題で中国とどんな重大な取引を結ぶこともできないだろうと、懐疑的に見ている。

だがトランプ政権の高官たちは、マティスやティラーソン、H・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)にいたるまで、北朝鮮と取引をする猶予は残されていないと繰り返し主張してきた。中国も彼らと同じ意見だ。北朝鮮問題で協力を得るために中国をおだてておきながら、他方で北朝鮮とビジネスをする中国企業を罰するというトランプ政権のやり方は、機能していない。

不動産王からテレビ番組の司会者、政治家になった現在まで、トランプの直感は常に大胆な方向へと傾いてきた。キッシンジャーに耳元で囁かれたことで、トランプがそれらの直感を取り戻し、彼を予想外の取引へと駆り立てるかもしれない。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産の今期2750億円の営業赤字に、米関税が負担 

ビジネス

米財務長官、年内再利下げに疑問示したFRBを批判 

ビジネス

米中貿易協定、早ければ来週にも署名=ベセント米財務

ビジネス

ユーロ圏GDP、第3四半期速報+0.2%で予想上回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 5
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 6
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 7
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中