最新記事

人道問題

ミャンマー軍のロヒンギャ迫害 多数の女性にレイプの傷痕

2017年10月3日(火)17時00分

9月25日、この数週間でミャンマーからバングラデシュに逃れてきた約42万9000人のイスラム系少数民族ロヒンギャ難民の一部を治療した医師たちは、数多くの女性に性的暴行の証拠となる負傷を確認した。写真は9月、コックスバザールの難民キャンプ(2017年 ロイター/Cathal McNaughton)

この数週間でミャンマーからバングラデシュに逃れてきた約42万9000人のイスラム系少数民族ロヒンギャ難民の一部を治療した医師たちは、数多くの女性に性的暴行の証拠となる負傷を確認した。

国連臨床医など医療関係者によるこうした証言について、いくつかの事例はロイターが閲覧した医療記録でも裏付けられており、ロヒンギャ女性が繰り返し訴えている、ミャンマー軍によるセクシャル・ハラスメントから集団レイプに至るさまざまな告発に真実味を与えている。

ミャンマー当局者はこうした告発について、軍を中傷するための武装勢力のプロパガンダだと一蹴。軍は合法的な反乱鎮圧作戦を展開しており、民間人を保護するよう命令を受けていると擁護している。

ミャンマーの事実上の指導者アウン・サン・スー・チー氏の広報担当官Zaw Htay氏は、いかなる告発に関しても当局は調査を行うだろうと語る。「レイプ犠牲者の女性はわれわれに訴えるべきだ」と彼は言う。「われわれは完全な保護を与える。調査して、必要な措置をとる」

スー・チー氏自身は、昨年後半より明らかになった軍によるロヒンギャ女性に対する多数の性的暴行疑惑について、口を閉ざしている。

昨年10月、ロヒンギャ武装勢力が警察の国境検問所を初襲撃したことで、ミャンマー北西部のラカイン州における暴力的衝突が発生した。武装勢力は再び8月25日に検問所や軍の基地を襲撃。これがミャンマー軍による大規模な反撃の引き金となり、国際連合が「民族浄化」と呼ぶ事態を招いた。

ロイターは、バングラデシュのコックスバザール地区で医療や難民保護に携わる8人の関係者を取材した。彼らは8月末以来、25件以上のレイプ事件の被害者治療に従事したという。

医師たちは、患者に何が起きたのかについて厳密な確認を求めようとはしなかったが、多くの女性による供述や彼女らの身体的な症状には誤解しようのないパターンが見られたと語る。彼女らは一様に、加害者はミャンマー軍兵士だと話していたという。

国家の正規軍が犯したとされるレイプ事件は、扱いにくい問題であるだけに、国連の医師や援助機関が話題にすることは珍しいことだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標や企業決算見極め

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中