最新記事

中国共産党

重慶市民、犯罪一掃した薄煕来を慕う 「遺産」に警戒強める中国

2017年8月2日(水)17時00分

参考にすべき世論調査は存在しないが、ロイター記者が先日重慶を訪れた際、商店主や労働者、炭鉱オーナー、弁護士など10人以上にインタビューしたところ、全員が今でも「薄時代」は良かったと思っていると答えている。

重慶市政府と国務院新聞弁公室(共産党広報官室を兼ねる)に本記事についてのコメントを求めたが、回答は得られなかった。

衣料品卸売業者のWu Hongさんは、「薄氏はわれわれのような一般市民のために、目に見える形で働いてくれた」と語る。

もちろん、重慶市にはこうした薄氏への評価に強く反発する人もいる。

組織犯罪一掃キャンペーン

重慶市の弁護士Li Zhuang氏は、薄氏を厳しく批判する。犯罪組織の首領とされる人物を弁護した後、2年6カ月にわたって収監されたLi氏によれば、薄、王両氏が推進した組織犯罪一掃キャンペーンによって、結果的に「不公正で誤った告発を多数」生み出し、多くの合法的で潔白な企業関係者が厳しい捜査の対象になったという。

電話による取材に応じたLi氏によれば、孫氏も、誤審と思われる有罪判決を撤回するような措置は何もとらなかったという。

だが、現地の石炭産業の大物であるJin Yihu氏の場合、薄氏による組織犯罪摘発が盛んに行われていた2011年に投獄されたという経験を味わっても、薄氏に対する敬意を捨てるには至らなかった。

炭鉱の所有権をめぐる対立を背景に、Jin氏はビジネス上のライバルによって、暴徒のリーダーとして警察に告発されてしまった。容疑が晴れるまで、彼は7カ月間拘留されていた。

しかしJin氏はロイターの取材に対し、薄氏について「当時でさえ、彼を恨むことはなかった」と話した。「薄氏に比べれば、孫氏は月とスッポンだ」

孫氏にとって不吉な兆候となったのは、共産党の汚職取り締まり部門である中央規律検査委員会が2月、重慶では薄氏による「有害な影響」の排除が進んでいないと批判したことである。

ロイターの報道を裏付けるように、中央規律検査委員会は24日、孫氏が「重大な規律違反」の疑いで取り調べを受けていると発表した。重大な規律違反とは、通常「汚職」の意味で党が用いるえん曲表現である。

薄氏は2013年に収賄、権力乱用、公金横領で有罪判決を受け、終身刑を宣告された。王氏もほぼ同様の罪で2012年に禁錮15年の刑を受けている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

高島屋、今期営業益予想を上方修正 百貨店コスト削減

ビジネス

午後3時のドルは151円後半に下落、米中対立懸念の

ワールド

トランプ氏、26日にマレーシア訪問 タイ・カンボジ

ビジネス

金価格、最高値更新続く 米利下げ観測などで銀も追随
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中