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文在寅政権に問われる、財閥改革の覚悟

2017年7月27日(木)16時40分
ジェフリー・ケイン(韓国在住ジャーナリスト)

もちろん時代遅れになっても、消滅が近いとは限らない。財閥は(長期的成長の阻害要因になっているとしても)いまだに経済の中核を担い、その存在はある程度まで国民に容認されている。だからこそ韓国の歴代政権は、財閥の規模縮小を目的とする新たな規制の導入を訴えながらも、その課題を次期政権に先送りし続けてきた。

それでも財閥改革を唱える文在寅(ムン・ジェイン)が大統領に就任して以来、反財閥派の間では期待が高まっている。それも当然だ。文が公正取引委員長に任命した金尚祖(キム・サンジョ)は財閥の在り方を鋭く追及してきた人物だ。

ただしその金も、任命後の発言は以前に比べて控えめだ。過去の政権と同様、法施行の徹底や株主の権利拡大を訴えつつ、4大財閥(サムスン、現代自動車、SKグループ、LGグループ)の規制を強化すると繰り返すにとどめている。

韓国の財閥は長年、「大き過ぎてつぶせない」ウォール街の金融機関と同じく、危機を免れてきた。とはいえアメリカ企業は、より起業家精神が旺盛で株主重視だ。名門の金融機関であれ製造業大手であれ、シリコンバレーの有名企業であれ、韓国の財閥に比べればその特権はわずかなものにすぎない。

その証拠というべきか、韓国人は自国を「サムスン帝国」と呼んでいる。一方、アメリカが「アップル合衆国」と称される事態はあり得ないだろう。

韓国の財閥は独特の才能を発揮して、株式会社という制度の抜け穴を突く。株主を募って資金を調達しながら、株主の異議を無視して、実際の経営権はファミリーで握り続ける。

いい例がサムスンの旗艦企業であるサムスン電子だ。株式保有率で見ると、経営者一族の存在感は大きくない。会長の李健煕(イ・ゴンヒ)(14年に急性心筋梗塞で意識不明になって以来、現在も入院して寝たきりの状態だ)は4%。その妻の洪羅喜(ホン・ラヒ)と、長男で事実上のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)はそれぞれ1%未満だ。

それでも李一族は複雑な株式持ち合いの手法を駆使し、サムスン電子はじめグループの会社を事実上支配している。いわゆる「サムスングループ」は法的実体ですらない。サムソンの名を共有し、相互に複雑に結び付いた59の企業を便宜的にこう呼んでいるだけだ。59社は全て事実上、李一族の監督下にある。

複数の従業員の話によると、特に李健煕の言葉は神のお告げのように絶対的な力を持ち、批判したり逆らったりすることは一切許されないという。

フィンランドのノキア、スウェーデンの産業界と金融界を牛耳るワレンベリ一族など世界には権勢を誇る富豪一族や企業グループが数々あるが、それらも韓国の財閥の絶大な力には遠くおよばない。

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