最新記事

中国政治

孫政才失脚と習近平政権の構造

2017年7月26日(水)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

失脚した元重慶市書記・孫政才 Jason Lee-REUTERS

習近平を国家主席にまで出世させたのは江沢民とその大番頭の曽慶紅である。政治人生最大の恩人で、政敵ではない。孫政才失脚を権力闘争と位置付けたのでは、中国の真相は見えない。歪曲した日本の中国報道を糾す。

胡錦濤政権「チャイナ・ナイン」の権力構造

筆者はかつて、胡錦濤時代の「中国共産党中央委員会(中共中央)政治局常務委員会委員9人」を「チャイナ・ナイン」と名付け、その権力構図と激しい権力闘争を描いた(『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』)。

それは胡錦濤政権(第二期:2007年~2012年)であるにもかかわらず、チャイナ・ナインの中で胡錦濤(中共中央総書記、国家主席)の味方をしてくれる人は温家宝(国務院総理=首相)と李克強(国務院副総理=副首相)しかおらず、残りの6人はすべて江沢民派によって占められていたので、多数決議決をしても胡錦濤の提案は必ず否決されていたからだ。

このことを「政治は中南海を出ない」という言葉で中国人民は表現していた。

その前の江沢民政権(第二期:1997年~2002年)のとき、中共中央政治局常務委員会委員は「7人」しかいなかった。

しかし、江沢民はどうしても胡錦濤に政権を譲り渡したくないために、強引に政治局常務委員を「7人」から「9人」に増やして自分の腹心を6人も胡錦濤政権の常務委員にねじ込み、多数決議決のときに「江沢民に有利な議決」が出るようにチャイナ・ナインを構成させたのである。

多数決議決は鄧小平が、毛沢東時代の独裁を是正するために絶対的原則としたもので、そのため常務委員の数は奇数になっている。

では、「江沢民に有利な議決」とは何か。

それは大きく分ければ二つある。

一つは江沢民の「既得権益を侵さないこと」で、もう一つは、実は「法輪功問題」だ。

「既得権益を侵さない」とは何を意味するかというと、江沢民はあらゆる権利を乱用して「腐敗の頂点に立っていた」ので、その「腐敗にメスを入れさせない」ことを指す。

江沢民時代(第二期)の国務院総理だった朱鎔基は、腐敗問題に厳しく、江沢民とその息子の腐敗を堂々と指摘してきた。江沢民の息子のことを「中国第一汚職王」と呼んだほどだ。江沢民は、このような反腐敗運動をする可能性のある者を排斥することに躍起になったのである。その結果、中国は手が付けられないほどの「腐敗大国」になっていった。

つぎに「法輪功問題」――。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送イランに2日目の空爆、トランプ氏は反撃に警告 

ワールド

イランが湾岸諸国に報復攻撃、民間インフラも対象 複

ワールド

OPECプラス、増産拡大検討へ イラン攻撃で石油輸

ワールド

パキスタンやイラクで抗議活動、イラン最高指導者の訃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 2
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 3
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 4
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキン…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 8
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 9
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 10
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中