最新記事

米住宅市場

アメリカに大邸宅ブーム再来、住宅バブルの兆候も

2017年7月5日(水)20時45分
グラハム・ランクツリー

住宅バブルの象徴マック・マンションが戻ってきた Mark Blinch- REUTERS

<世界金融危機の前に全盛だった「マック・マンション」が戻ってきた。大邸宅を建てるために借金を競った住宅バブルの再来を防ぐため、すぐにも利上げをすべきだと専門家は警告する>

アメリカに「マック・マンション」が戻ってきた。サブプライムローン(信用度の低い個人向けの住宅融資)の全盛期、マクドナルドの店のように画一的な大邸宅をそう呼んだ。2007~2008年のサブプライム危機と金融危機を加速させたマック・マンションが復活し、再び住宅バブルを膨らませている。

「住宅価格の高騰は本物だ。完全に行き過ぎだ」と先週、投資家向けリポートに書いたのは、米MUFGユニオンバンクの主任エコノミスト、クリス・ラプキーだ。「今の住宅価格の上昇は、前回住宅バブルが起きた時と同じくらい急速で厄介だ」

【参考記事】なぜか再びアメリカで銀行がつぶれ始めた

金融危機の後約10年、休眠状態にあったマック・マンションの価格は昨年、金融危機以前の水準まで持ち直し、今年に入ってさらに急上昇している。

マック・マンションの目玉は、何と言ってもその広さ。床面積は最低でも約280平方メートルで、広々とした玄関ホールとシャンデリアが特徴だ。豪華な印象を与えるが、安い建材で作られているところがいかにもバブルっぽい。

過熱市場の象徴

マック・マンションと呼ばれるような大型分譲住宅はアメリカ郊外の至る所で量産されてきた。1980年以降に建てられた住宅の4分の1はこの範疇に入る。

金融危機の直前は超大型のマック・マンションが流行り、平均床面積は約650平方メートルに達した。アメリカの過熱する住宅市場の象徴的存在になったが、住宅バブルの崩壊で大不況に突入した。

そんなマック・マンションが今、住宅市場に復活した。マック・マンションの価格の上昇は良い知らせではないと、専門家は言う。

「住宅価格の暴落が金融危機後の世界大不況に拍車をかけた」とラプキーは指摘し、アメリカの中央銀行であるFRB(米連邦準備理事会)は、人々がマック・マンションを建てやすくなる今の低金利政策を早々に見直すべきだと言った。

そもそも金融危機は、巨大銀行や証券会社がリスクの高いサブプライム住宅ローンを証券化し、金融機関や投資家に売りつけたことから始まった。住宅バブルがはじけて人々のローン返済が滞ると、証券化商品の価格は暴落し、金融機関を通じた損失の連鎖が世界経済を呑み込んだ。

【参考記事】サブプライムショックで世界同時株安

だが米住宅メーカーは今、マックマンションの建設ラッシュに沸いており、今年5月の販売件数は79万4000件に達した。米不動産サイトZillow(ジロウ)のデータによれば、昨年、マック・マンションの価格は急上昇している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、大麻規制緩める大統領令に近く署名か 米

ワールド

ウクライナ、東部要衝都市を9割掌握と発表 ロシアは

ビジネス

ウォラーFRB理事「中銀独立性を絶対に守る」、大統

ワールド

米財務省、「サハリン2」の原油販売許可延長 来年6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中