最新記事

米住宅市場

アメリカに大邸宅ブーム再来、住宅バブルの兆候も

2017年7月5日(水)20時45分
グラハム・ランクツリー

金融危機の前、マック・マンションが最も売れていた時期の中間価格は51万9500ドルだった。大不況の最中はそれが36万1574ドルまで下落した。それ以降、全般に住宅価格は上昇してきたが、マック・マンションの上昇率は他を上回る。

英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の経済パフォーマンスセンター(CEP)のクレメント・ベレ研究員が今年の春、マック・マンションの建設が増加すると周辺の住民は小さい自宅への不満を募らせる、とする論文を発表した。マック・マンションが増えるほど、周辺住民はもっと大きな家を建てたくなり、借金に走るのだという。

ベレは米国勢調査局が実施した1984~2009年のアメリカの住宅調査を分析し、住宅所有者は「近所に大型の家が建った後、相対的に自宅の価値が下がったように感じた」経験を持っていることを発見した。

低金利で拍車

アメリカ人は、金融危機が起きる直前まで大型の家を追い求めていた。「近所の人に負けじと見栄を張った」結果だったというのがベレの分析だ。「所得に占める住宅ローンの割合は、1945年の20%から2008年には90%まで上昇した」と、ベレは指摘する。住宅ローンの膨張とともにマック・マンションも巨大化し、それに負けないよう、さらに多くの人がマック・マンションを建てた。

「住宅所有者が見栄を張らなければ、所得に占める住宅ローンの割合は金融危機の直前より25%は低かったはずだ」とベレは言う。「マック・マンションが嫌がられるのは、周辺住民の持ち家に対する満足度を下げるからだ」と、ベレは本誌に語った。

マック・マンションが建って裕福な住民が引っ越してくることで、周辺施設や環境が改善し、地域の評判が上がることもある。だが全体としては、マック・マンションは住民の自宅に対する満足感を減退させ、より大きな家を建てる競争を煽っていた。

だからこそFRBは今、利上げで住宅価格の高騰にブレーキをかける必要があるのだとラプキーは言う。

だがFRBは、まだ大不況以来の逆風が残っており、利上げペースを上げることはできないと言っている。2017年の第一四半期のアメリカの経済成長率も1.2%止まりだった。

「住宅価格は高騰し、市場では新たなバブルが生まれている」とラプキーは言う。インフレは「FRBがもっと速いスピードで利上げを行うまで」止まらないと彼は見る。「今のような住宅価格の上昇に、自然な点は一つもない」

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、6月予想外の3.3万人減 前月も

ワールド

EU、温室効果ガス40年に90%削減を提案 クレジ

ビジネス

物価下振れリスク、ECBは支援的な政策スタンスを=

ビジネス

テスラ中国製EV販売、6月は前年比0.8%増 9カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中