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暴言ツイッターはトランプの巧妙な戦略?

2017年7月6日(木)10時10分
マシュー・クーパー(ワシントン支局長)

独立記念日のイベントに夫人と共に姿を見せたトランプ Mike Theiler-REUTERS

<トランプが女性キャスターへの中傷で批判を浴びているが、自分に不都合なニュースを埋没させるための「戦略」と見たほうがいい>

イカレていると言いたくなるのも無理はない。先週、トランプ大統領がツイッターに書き込んだ内容はあまりに常軌を逸していた。自らに批判的な女性テレビキャスターのミカ・ブレジンスキーを「IQが低い」と罵り、(昨年末面会に来たときには)「顔のしわ取り手術を受けて出血していた」と女性差別的な中傷まで行ったのだ。

だが、問われるべきは、トランプの精神の健康だけではない。おそらく、暴言は計算されたものでもあった。今回の書き込みは、批判を集めているし、支持率にも悪影響を及ぼすだろうが、ある目的は達した。メディアがこの話題で一色になった結果、トランプにとって不利なほかのニュースがかき消されたのだ。

その日、トランプがブレジンスキーを中傷していなかったら、3つのニュースが大きく報じられていたはずだ。1つは、オバマケア(オバマ前大統領の医療保険制度改革)代替法案の上院採決が先送りになったというニュース。党指導部の案に対して党内の反発が強いことが原因だ。

もう1つは、トランプがロシアのプーチン大統領と初会談するというニュース。さらには、ロシア疑惑関連で辞任したフリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)をめぐる疑惑だ。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、フリンは昨年の大統領選期間中、トランプの対立候補ヒラリー・クリントンの電子メールを入手しようとする試みに関与していた疑いがあるという(ロシアのハッカーによりメールが盗み出されたと考えていたようだ)。

こうしたニュースは、トランプの暴言で消し飛んだ。過去にも同じパターンがあった。

【参考記事】トランプがCNNを殴るプロレス動画の波紋

衝動の抑制に難はあるが

トランプは女性テレビキャスターのメーガン・ケリー、メキシコ系の連邦判事ゴンザロ・クリエル、戦死したイスラム教徒米兵の遺族であるカーン一家に暴言を吐いたときも、激しい批判を浴びた。それでも、自分にとって不都合な報道をかき消すことには成功した。しかも、トランプはこれらの暴言による実質的なダメージを負っていない。

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