最新記事

日本政治

政治活動にほとんど参加しない日本の若者

2017年6月14日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

このやり方で、日本の20代(111人)の政治活動スコアを出し、平均値を出すと11.9点となる。同じアジアの韓国(14.6点)やアメリカ(17.6点)と比べるとだいぶ低い。34カ国の20代の政治活動スコアを高い順に並べると<図1>のようになる。

maita170614-chart02.jpg

日本は下から3番目に位置している。社会的な統制が強いためか、旧共産圏の2国(ロシアとハンガリー)は日本よりも低い。グラフの上をみると、若者の政治活動が最も活発なのはスウェーデンだ。この国の高福祉は、国民の政治活動の活発さと関係しているのかもしれない。

このスコアは政治活動のレベルを測る総合尺度だが、政治活動といってもいろいろある<表1>。どういう活動の実施頻度で差が出ているのか。主要国を取り出して、詳しく見てみる。<表2>は、それぞれの活動を「過去1年以内にやったことがある」人の割合を国ごとに整理したものだ(表2中の「瑞」はスウェーデンのこと)。

maita170614-chart03.jpg

黄色は7カ国の最高値、青色は最低値だが、どの活動の実施率も日本が最も低い。デモや政治活動への参加率はどの国も高くないが、署名活動や商品ボイコットの経験率は欧米と日本ではかなり開きがある。

今は、署名活動はインターネットを使って行うことができる。ネット上での意見表明もできるが、この項目の実施率も日本で3.6%とすこぶる低い。インターネットを介した「現代型」の政治活動にも参加していない。

【参考記事】全国の図書館職員は、今や半分以上が非正規

日本の若者は、投票行動だけでなく政治活動も不活発であることがわかったが、社会への関心は以前にくらべて強くなってきている(内閣府『社会意識に関する世論調査』)。その思いが、合法的な手段ではなく非合法の手段に向かってしまうとしたら怖い。世界での過激な暴動やテロ、国内のネット上での不法な振る舞いを目にするたびに、そんな懸念を抱く。

社会への関心を熱弁する一方で「デモ」の言葉の意味を知らない学生に会って、筆者は驚いたことがある。社会を変える合法的な政治活動について、公民教育で教える必要があるのかもしれない。

青年はいつの時代も高い理想を掲げ、現実の社会との隔たりを見ては失望し、社会を変えたいという情熱の炎を燃やす。そのエネルギーが正しい方向に向かえば、社会は大きく変わる可能性があるが、それを促すのは大人の役割でもある。

<資料:ISSP「シティズンシップに関する意識調査」(2014年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

関税交渉で来週早々に訪米、きょうは協議してない=赤

ワールド

アングル:アルゼンチン最高裁の地下にナチス資料、よ

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人口学者...経済への影響は「制裁よりも深刻」
  • 4
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウ…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    約558億円で「過去の自分」を取り戻す...テイラー・…
  • 8
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    父の急死後、「日本最年少」の上場企業社長に...サン…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 8
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中