最新記事

フランス政治

フランス大統領選、勝者マクロンは頼りになるのか

2017年5月8日(月)17時57分
ジョシュ・ロウ

パリのルーブル美術館の近くで勝利を祝うマクロンと支持者 Thomas Samson-REUTERS

<極右ルペンがフランスの大統領になるという悪夢は避けられた。では、ルペンを大差で破った中道右派のマクロンとは何者で、フランスとEUをどうするつもりか>

フランス大統領選の決選投票が日曜にあり、中道のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相が極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン候補に圧勝。リベラルな社会と国際協調を重視する政策が、孤立主義や排外主義を掲げる極右を退けた。

仏内務省の集計(開票率99%)によると、マクロンの得票率は65%、ルペンは35%だった。

世界が固唾をのんで見守ったフランス大統領選は終わったが、今後フランスはどうなるのか。このマクロンの圧勝は何を意味しているのだろうか。

【参考記事】仏大統領選、中道マクロンの「右でも左でもない」苦悩

本当の戦いはこれから

昨年はイギリスが国民投票でまさかのEU離脱を決め、アメリカの大統領選でも泡沫候補と思われていたドナルド・トランプが勝利した衝撃から、今回の仏大統領選でも何が起こってもおかしくない、という緊張感があった。事前の世論調査でいくらマクロンの優勢が伝わっていても、なかなか信じるのは難しかった。

【参考記事】マクロン新大統領の茨の道-ルペン落選は欧州ポピュリズムの「終わりの始まり」か?

だが実際は第1回投票が終わった時点で、中道右派のマクロンが大統領に選ばれる見通しは疑いようがなかった。彼が率いる政治運動「アン・マルシュ(前進!)」の支持者はずっと前から、本当に厳しい戦いの舞台は6月11日と18日に行われる国民議会(下院)選挙になると覚悟していた。

仏大統領の権限の多くは議会で首相の支持を必要とする。しかも首相の任命は大統領の政党単独で国民議会の過半数の支持を得られなければ、連立を組むしかない。マクロンが1年前に立ち上げたばかりの「前進!」は現有議席がゼロ。それが今や、国民議会定数577議席のうち過半数の289議席を占める必要がある。

【参考記事】フランス大統領選挙―ルペンとマクロンの対決の構図を読み解く

マクロンはそれが不可能に近いことを認めており、勝利演説の中で「真の多数派、強い多数派、変革のための多数派」を築くと誓った。

だがマクロンに敗れた対立候補たちも、そうした事情を心得ている。

中道右派の最大野党・共和党はフランソワ・フィヨンを大統領候補に選出したものの、選挙戦では妻子の架空雇用疑惑が足かせとなり、決選投票に進めなかった。フィヨンは、6月の国民議会選挙に向けた党内の指導的立場から退く意思を表明。けじめがついたと見るや、共和党はすぐさま国民戦線に対抗するホームページを立ち上げて存在感を見せた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

自工会会長、米関税「影響は依然大きい」 政府に議論

ワールド

中国人民銀、期間7日のリバースレポ金利据え置き 金

ワールド

EUのエネルギー輸入廃止加速計画の影響ない=ロシア

ワールド

米、IMFナンバー2に財務省のカッツ首席補佐官を推
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中