トランプと習近平の「蜜月」 アジア各国は「米中G2」を疑心暗鬼

2017年5月3日(水)10時46分

とはいえ、長年の同盟国は、米政府がどこまで後ろ盾として動いてくれるか、いぶかる向きもあるだろう。

トランプ大統領が北朝鮮問題の対応で習氏の協力を得ることに集中し、「米中によるG2的な体制」が生まれれば、日本や韓国は影響力を失いかねない、と英王立統合防衛安全保障研究所のシャシャンク・ジョシ氏は指摘する。

「トランプ氏の中には、反発しあう(2つの)本能があり、同氏を同時に正反対の方向に押しやっている」と、ジョシ氏は語る。

「彼のナショナリズムは、中国と競争する方向に彼の背中を押す。しかし、彼の交渉者としての本能や、個人的な影響力への寛容さ、強いリーダーへの好意は、習氏の方向に彼を後押ししている。習氏が北朝鮮で結果を見せられるなら、なおさらだ」

ただ、不動産デベロッパーとしての交渉力を自慢してきたトランプ大統領は同時に、中国への姿勢は取引的なものだと明確にしている。国家安全保障面で大統領の最優先事項となっている北朝鮮問題で、中国の協力を得ることに集中するあまり、見返りに重要な貿易問題で中国政府への圧力を弱めることを公式の場で約束すらした。

とはいえ、トランプ大統領の側近には、北朝鮮の核とミサイル開発を制御するために、中国が十分な働きをするかを疑う向きもある。経済的なライバル同士の雪解けは、習主席が北朝鮮問題で成果を出せなければ、消え去ると分析する専門家もいる。

南シナ海問題

トランプ大統領のアジア戦略のヒントを得ようと、東南アジア諸国の指導者たちは大統領の発言を注意深く分析している、とシンガポールを拠点とするISEASユソフ・イシャク研究所のイアン・ストーリー氏は語る。

「ほとんどの指導者は、穏やかで協力的な米中関係を歓迎するだろう。だが、南シナ海の領有権紛争などの問題で、トランプ大統領が習主席にフリーハンドを与えるようなそぶりを少しでも見せれば、深刻な懸念を持つだろう」と同氏は指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P上昇、終盤に買い GDP

ワールド

米・ウクライナ、復興投資基金設立協定に署名 米財務

ワールド

原油先物急落、サウジが増産示唆 米WTI21年3月

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米GDPは3年ぶりのマイナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・ロマエとは「別の役割」が...専門家が驚きの発見
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中