最新記事

原発

東電が新再建計画 送配電・原発で10年以内の再編・統合を明記

2017年5月11日(木)20時08分

この売却益を確保するには東電の「企業価値向上」が不可欠になる。再建計画では、廃炉と賠償に係る5000億円の費用の確保のほかに、16年度に1300億円だった純利益を4500億円程度に引き上げる必要があるとした。

原発再稼働を前提とした26年度までの収支計画と比較して、純利益のレベルを概ね2倍以上に引き上げる必要がある。

そのために、新計画では海外事業を通じた収益拡大、送配電や原子力分野で「共同事業体」を設立、再編・統合を通じた収益力強化が必要と明記した。

東電の会見に先立って計画内容を説明した原賠支援機構の幹部は、「共同事業体設立には潜在的パートナーの理解を得ていくことが大事。多様な提案を受け付けること、分野ごとに着実に進める」などと説明した。

とはいえ、数十年間の長期にわたり、ばく大な資金負担を強いられる東電との再編に踏み出すことに、電力会社側の警戒感は極めて強い。1、2年といった比較的短期に東電との再編で前向き姿勢に転じる電力会社が出現する公算は小さそうだ。

柏崎刈羽原発の地元新潟県の米山隆一知事は、昨年10月の就任以降、再稼働に厳しい姿勢を崩していない。再編、再稼働がそれぞれ実現しなければ、新計画が「絵に描いた餅」に終わる可能性も否定できない。

国有化は継続

合わせて原賠支援機構は、現行の再建計画で2016年度末に実施する予定だった東電の経営評価の内容を公表した。

それによると、燃料・火力事業での中部電力<9502.T>との提携や6年半ぶりの公募社債市場への復帰などを評価した。

一方で、福島第1原発事故でのメルトダウン隠しや柏崎刈羽での免震重要棟の耐震性に関する対応の不備といった原子力安全の徹底などで「進捗が十分でなかった」と指摘。機構を通じた国の議決権比率2分の1超を継続するとの結論を示した。


(浜田健太郎 編集:田巻一彦)

[東京 11日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中