最新記事

日本社会

三世代同居では日本の保育・介護問題は解決できない

2017年4月27日(木)17時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

保育所や介護施設は著しく不足しているのが日本の現状 diego_cervo/iStock.

<日本の家族構造の変化に逆行するように、政府は三世代同居の奨励によって保育所や介護施設が不足する福祉問題を解決しようとしている>

日本の社会変化に伴い、家族の構造は変わってきている。

その変化の筆頭はまず家族の構成人数の減少で、一般世帯の平均世帯人数は1960年では4.14人だったが、半世紀を経た2015年には2.39 人に減っている(総務省『国勢調査』)。単身世帯の増加や三世代世帯の減少、少子化などが原因としてあげられる。

もう一つは核家族化で、親族世帯に占める核家族世帯(親と未婚の子からなる世帯)の割合は、1960年~2015年の期間に63.5%から86.1%へと増えている。今となっては、三世代世帯で育つ子どもは少数派だ。

【参考記事】育児も介護も家族が背負う、日本の福祉はもう限界

戦後初期の頃までは、家族は消費のみならず、生産(家業)、子育て、介護などの機能を担っていた。しかし現在では、上記のような構造変化、さらには女性(母親)の社会進出の進展によって、その多くの機能を家庭外に持ち出さざるを得なくなっている。だが保育所や介護施設は著しく不足しているのが現状で、政府は今になって三世代の同居を推奨する動きを見せている。

三世代が同居している世帯の割合は、国によってかなり異なる。15歳生徒のうち、祖父母(grandparents)と同居している者の割合を国ごとに出し、高い順に並べると<表1>のようになる。

maita170427-chart01.jpg

祖父母と同居している生徒の割合は、東欧やアジアの各国で高い。日本も32.1%で、63カ国の中では高いほうだ。一方、他の主要国の値は低く、ヨーロッパでは一桁の国が多い。最低のオランダでは2.1%しかいない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベラルーシ大統領、米との関係修復に意欲 ロシアとの

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ワールド

ロシア中銀、欧州の銀行も提訴の構え 凍結資産利用を

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 8
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中