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三世代同居では日本の保育・介護問題は解決できない

2017年4月27日(木)17時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

ヨーロッパでは個人主義の考え方が根底にあるようだが、人々の意識のうえでも成人した子どもが親と同居するのは好まれていない。<図1>は、日本とスウェーデンの親に、将来子どもにして欲しくない家庭生活像を尋ねた結果だ(複数回答による)。

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横軸に日本の親、縦軸にスウェーデンの親の選択率をとった座標上に、11の項目を配置している。両国の差が大きい項目を丸で囲ったが,日本の親は「同性愛で生活」や「未婚で子を持つこと」をして欲しくない、と考えている。

一方、スウェーデンでは7割の親が「自分(配偶者の親)との同居」を選んでいて、日本の親との差が大きい。三世代の同居が忌避されていることが分かる。西欧や北欧の他の国でも同じだろう。

【参考記事】共謀が罪なら、忖度も罪なのか?

10年以上前の調査結果ではあるが、日本でも若い世代の意識は同様の方向に変化しつつあると見られる。それにもかかわらず三世代の同居が闇雲に推奨されるならば、そこに感情的な軋轢が生じる可能性が出てくる。

もちろん家族でしかなし得ないことはある。そこは尊重しつつも、適度な機能分担が図られることが必要だ。これからの育児や介護は、そのように変化していかなければならない。家族に期待(負担)をかけすぎてはいけない。

<資料:OECD「PISA 2012」、
    国立女性教育会館『家庭教育に関する国際比較調査』(2006年3月)>

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