最新記事

北欧

中国とノルウェーの関係正常化、鍵は「ノーベル平和賞」と「養殖サーモン」

2017年4月18日(火)13時40分
鐙麻樹(ノルウェー在住ジャーナリスト&写真家)

ernasolberg_asakiabumi-0703.jpg
「中国に謝罪したも同然」という批判もあるノルウェーのソルベルグ首相 Asaki Abumi

ポジティブにもネガティブにも、今後の両国の関係は今とてもホットな話題だ。各紙の伝え方の一部を紹介しよう。

「ノルウェー企業との契約に、中国企業が行列」という目線


・DN(4/8)見出し「中国はノルウェー企業に飢えている」

関係正常化前は中国企業にとってノルウェー国営企業と取引をすることはありえないことで、もし契約をしていれば中国政府とトラブルになっていた。中国人ビジネスマンであるLiu氏は「昨年まではノルウェー産業、特に国営企業に投資することは政治的に正しいことではありませんでした。関係正常化は新しいチャンスを見出します。今やノルウェーはホットトピック。フィンランドやスウェーデンなど、ほかの北欧他国と比較しても、ノルウェーは決断プロセスまでに時間がかからず、いきいきとした雰囲気があり、ビジネスがしやすい」と答える。

また、各紙は首相率いるノルウェーチームとの集まりの場に、「多くの中国企業が興味を持って参加した」と報道。


・経済新聞Finansavisen(4/10付)

中国には課題が多く、知識や技術があるノルウェーの得意分野(※)に可能性を見出している。民主主義や人権において中国はロールモデルではないが、両国はその他の中心分野において興味を共有している。


※健康・気候技術、デザイン、クリエイティブ産業、再開発エネルギー、水産業、観光業

「養殖サーモンがやっと売れる!」という目線

産業においてシンボルとなっているのはノルウェー養殖サーモン。2010年には中国での産業の94%を占めていたが、平和賞授与後には4%に。新鮮なノルウェーサーモンの中国への輸出量は2010年には1万2434トンだったが、2016年には598トンにまで落下。今回の関係正常化で数字は65%に回復するとみられている(Nationen紙、DN紙、Dagsavisen紙)

中国とノルウェーの「仲直りのシンボル」にもなっている養殖サーモン。しかし、ノルウェー国内では養殖サーモンに対しては批判的な報道が以前より続いており、シラミ感染やエコシステム破壊などの問題を改善しなければ、中国が求める生産数をだすことはいずれ難しくなるという意見もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド機墜落事故、米当局が現地調査 遺体身元確認作

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安で買い優勢 前週末の

ビジネス

アマゾン、豪データセンターに5年間で130億ドル投

ワールド

イラン世界最大級ガス田で一部生産停止、イスラエル攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中