最新記事

トランプ政権

トランプの危険な黒幕バノンの命運も尽きた

2017年4月19日(水)10時40分
レイハン・サラム(スレート誌コラムニスト)

選挙戦ではトランプ旋風を仕掛けたが現実政治では素人同然 Matt Mcclain-The Washington Post/GETTY IMAGES

<拙速なゴリ押しでトランプ政権にダメージを与えたが、NSCから外されて影響力は急降下>

トランプ米大統領の上級顧問・首席戦略官を務めるスティーブ・バノンが、国家安全保障会議(NSC)のメンバーから外されたのは「降格」ではない――政権関係者もバノン本人もそう主張して、政権内の主導権争い説をもみ消すのに必死だ。

バノンによると、自分がNSC入りしたのはオバマ前政権時代の「政治的に操作可能」なNSCを「操作不能な組織に戻す」ため。そのミッションが完了したから抜けただけだという。

こんな話を真に受けてはいけない。ニューヨーク・タイムズによると、バノンはNSCから締め出されることを極度に恐れ、外されたら政権を去ると脅しをかけていたらしい。

政権を去るなら今が最適のタイミングだ。選挙戦中にトランプの支持拡大に貢献したバノンは、政権発足後も支持率を上げるため、さまざまな策略を練ったが、結果は惨憺たるものだ。

今のうちに手を引けば、「メディア戦略の達人」という選挙戦中の評価を失わずに済む。トランプの娘イバンカとその夫でトランプの上級顧問を務めるジャレッド・クシュナーに「刺された」と暴露本に書けば、世論も少しは同情してくれるだろう。

未練がましく政権内にとどまれば、米政治に革命を起こそうとして失敗したヘマな策士として歴史に名を残すことになる。

隠れファシスト、誇大妄想狂などと呼ばれるバノンだが、本人は既成保守を批判する新保守「オルト・ライト」の旗頭を自任。共和党を経済ナショナリズムと大盤振る舞いの政党に、さらには労働者に支持されるポピュリスト政党にすることを使命と心得ている。

【参考記事】「軍事政権化」したトランプ政権

公約実現の足を引っ張る

首席戦略官としての当面の課題は、移民規制に世論の支持を取り付け、議会の承認を得て大規模な財政出動を実施するなど、トランプの公約を実現することだ。こうした課題に対し、バノンは有効な手を打てなかったばかりか、反対陣営を勢い付けるような失態を演じてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、G20首脳会議欠席の可能性 南アと「多

ワールド

米商務長官、国内調達不可の品目は関税免除も コーヒ

ビジネス

米P&G、通期業績見通しが市場予想下回る 一部米製

ビジネス

米EU合意、良い取引でないと仏ロレアルCEO 高コ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 3
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突っ込むウクライナ無人機の「正確無比」な攻撃シーン
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    タイ・カンボジア国境紛争の根本原因...そもそもの発…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    グランドキャニオンを焼いた山火事...待望の大雨のあ…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「出生率が高い国」はどこ?
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中