最新記事

ラグジュアリー

スイスの高級腕時計ブランドにグレーマーケットは必要悪か

2017年4月17日(月)08時29分

グレーマーケットでは、質素で小規模な店舗、もしくはオンラインで販売が行われ、商品のほとんどを在庫として持つことなく、注文があった場合にのみ調達している。

前出のランドール氏によれば、グレーマーケットに製品を流さないようにする努力は、ブランドによって異なるという。最も調達が難しいのはパテック・フィリップとリシャール・ミルで、生産量も厳しく管理しているという。やはり独立系ブランドのオーデマ・ピゲは、直営店を通じて特定のモデルだけを流通させている。

「(スウォッチ系列の)オメガや(LVMH系列の)タグ・ホイヤーは、いつでも簡単に仕入れられる」とランドール氏は言う。

米グレーマーケットで活動する販売業者もこれに同意し、リシュモン系列のジャガー・ルクルトとヴァシュロン・コンスタンタン、それにスウォッチ系列のブレゲも、仕入れは容易だと語る。

米国は世界で2番目に大きいスイス製腕時計の市場だ。この国には「Jomashop.com」や「AuthneticWatches.com」、「PrestigeTime.com」などのオンライン販売サイトがあり、グレーマーケット向け商品の重要拠点となっている。

「国外からたくさんグレーマーケット向けに腕時計が流入してくる。世界的にだぶついている商品は、以前だったら香港に流れていたが、今はそれが米国に来るようになった」と語るのは、米国で複数のスイス最大手ブランドの公式販売パートナーを務める一方で、オンラインで中古腕時計を販売しているダニー・ゴブバーグ氏。

ゴブバーグ氏は、新品を中古として彼のオンラインショップで販売しないかというブランド側からのオファーが時折あることを認めたが、ブランド名は明かさず、それは彼の事業の小さな部分に過ぎないと語った。

安さが魅力に

グレーマーケットは決して米国の専売特許ではない。ドイツの「Chrono24.com」は香港とニューヨークに営業事務所があるほか、アマゾン(AMZN.O)やイーベイ(EBAY.O)でもグレーマーケット向けの腕時計が大量に売られているという。

「グレー」と呼ばれるだけに、こうした市場については何の統計もなく、どのようなシステムで動いているのか積極的に説明しようという販売業者もほとんどいない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ワールド

IS、豪銃乱射事件「誇りの源」と投稿 犯行声明は出

ビジネス

ECB、成長率とインフレ率見通し一部上方修正=スタ

ビジネス

米11月CPI、前年比2.7%上昇 セールで伸び鈍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 7
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中