最新記事

雇用

フランス大統領選、新労働スタイル「ギグ・エコノミー」が争点に

2017年4月14日(金)14時33分


新規雇用の立役者

フランスは労働者の権利が伝統的な雇用契約で手厚く守られていることで知られる。労働時間は週35時間に抑えられ、解雇は難しい。

だからこそ雇用主は正規採用を尻込みし、慢性的な高失業率という代償を払っているのだとの批判もある。10%というフランスの失業率は、ドイツや英国のおよそ2倍に上る。特に若者層は4人に1人は職がない状態に近づきつつあり、バンリューに多く住む移民も国内に溶け込ませられない。

しかしギグ・エコノミーがこの状況を変えつつある。

現在フランスで個人事業主として110万人が登録されている。実際に活動しているのは64万3800人で、労働力人口の約2900万人(失業者数は350万人)のごく一部にすぎない。それでもボストン・コンサルティング・グループがウーバーの委託で実施した調査によると、パリ地域では昨年前半、ウーバーなど配車サービス業界、いわゆる「VTCセクター」だけで新規雇用総数の25%を生み出した。地方はパリほどウーバーの事業が活発でないが、フランス全体でも新規雇用総数の15%を同セクターが占めた。

皮肉なことに英米に比べてフランスは規制が厳しい分、逆に配車サービスは成長余地が大きい。昨年段階では、住民1000人当たりのタクシーとVTC運転手の数はロンドンが12人、ニューヨークは17人だがパリはたった5.6人だ。夜中にタクシー会社に電話して車を呼ぼうとすれば一苦労だが、パリ以外の地域では苦労がさらに大きくなるだろう。

ボストン・コンサルティングは、パリがロンドンないしニューヨーク並みの運転手数に向かうとすれば、2022年までにほぼ6万人の追加雇用が生まれる可能性があると試算した。

宅配サービスの成長も著しく、デリバルー幹部によると、昨年のフランスにおける売上高は650%増と他の欧州市場を上回った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却承認 ハイマースなど過去最大の

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中