最新記事

円高

「トランプ円高」が加速 朝鮮半島リスクとドル高けん制で

2017年4月13日(木)19時21分

4月13日、「トランプ円安」から一転して「トランプ円高」になってきた。地政学リスクの高まりから逃避の円買いが進行、トランプ米大統領のドル高けん制発言も加わり、ドルは一時108円台まで落ち込んだ。都内の外為取引会社で1月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

「トランプ円安」から一転して「トランプ円高」になってきた。シリアや北朝鮮を巡る米国の軍事行動が地政学リスクを高め、逃避の円買いが進行。トランプ米大統領のドル高けん制発言も加わり、ドル/円JPY=EBSは一時108円台まで落ち込んだ。

「有事」の際、円高・円安どちらに進むかは見方が分かれているものの、足元では海外短期筋による円ロングの勢いが勝り、節目を次々と突破している。

200日移動平均線を割り込む

ドル/円は13日、200日移動平均線を一時割り込んだ。200日移動平均線は1年の平均コストとほぼ同義。昨年11月の米大統領選直後に上回った同線を一時的にせよ割り込んだことは「トランプ円安」が正念場を迎えたことを示している。

下押し材料となったのは、トランプ氏の発言だ。米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで「ドルが強くなり過ぎている」とコメント。さらに金利が低水準にあることを望むとも述べたことで、10年米国債利回りUS10YT=RRは年初来のサポート水準だった2.3%台を大きく割り込んだ。

「減税など財政政策がうまくいかないことで、政策の中心が、議会を通さなくてもいい外交や通商、為替政策に移ってきたようだ。米景気などファンダメンタルズが悪くなったわけではないが、政治リスクが円高材料となっている」と、りそな銀行・アセットマネジメント部チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は話す。

朝鮮半島で有事なら瞬時に2─3円の円高

地政学リスクも円高材料だ。米中首脳会談期間中に、米国はシリアにミサイル攻撃を実施。その後、原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群を朝鮮半島周辺へ移動させている。「地政学リスクを材料に海外短期筋が、円買いを進めている」(国内証券)という。

北朝鮮では、15日に故金日成主席の生誕105周年の記念日が控えている。北朝鮮がイベントに合わせて核実験やミサイル発射などを行えば、緊張が一気に高まる。「朝鮮半島で有事となれば、瞬間的に最大2─3円程度の円高が進む可能性もある」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・チーフ為替ストラテジスト、植野大作氏は予想する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、エプスタイン氏自家用機8回搭乗 司法省

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

銅価格、1万2000ドルの大台を突破し最高値 今年

ワールド

国連安保理、ベネズエラ情勢巡り緊急会合 米「最大限
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中