最新記事

中国政治

全人代、党大会控え人心安定優先――習政権の苦渋にじむ

2017年3月6日(月)22時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

3月5日に人民大会堂で開幕した全人代 Thomas Peter-REUTERS

3月5日、全人代(全国人民代表大会)が開幕した。注目点は国防費と経済規模と民心。第19回党大会を控えた今年、安定を優先。随所に人民の不満への警戒が滲み出ており、トランプ政権を意識した場面もあったが、ほぼ窮地の裏返しだ。

初めて1兆元を超えた国防費

全人代は中国時間の午前9時から北京の人民大会堂で開幕し、李克強国務院総理が政府活動報告を行なった。報告の中で「国防費」に関しては一言も触れなかった。言及したのは「国防」に関する中国政府の考え方のみで、それも報告が終わる数分前。「国家の主権と安全のために強軍目標は維持する」ことと「軍隊に対する党の指導は絶対である」と言ったくらいだ。

国防費に関して最大の関心を示していた日本や西側諸国は肩透かしを食らっただろうが、予算案は5日午後以降から始まる会議で審議され、財政部案が決議された後に正式に公開される。

おおむねの国防費に関しては、3月4日に内外記者向けに開催された「新聞発布会」で、全人代の傅瑩(ふえい)報道官がCNNの記者の質問に回答する形で発表している。

それによれば、「2017年の国防予算案の伸び率は(前年比で)7%前後になり、GDPの1.3%を占める」とのこと。史上初めて1兆元(約16兆5千億円)の大台を超える。とは言え、「アメリカが先月、ミュンヘンにおける国防会議でNATO(北大西洋条約機構)加盟国に要求したGDP比2%の国防費に比べれば、中国の国防費のGDPに対する割合は非常に低い」と彼女は「にこやかに」切り返した。

またCNN記者の「中国のGDP成長率が減少している中で、軍事費だけは成長を続けるのはなぜか」「アメリカのトランプ大統領が最近、軍事予算を大幅に増やすと言ったことと関係するか?」という質問に対して、傅瑩女史はおおむね以下のような主旨のことを答えている。

「世界で頻発している紛争あるいは戦争行為に関して、中国が主導しているものが一つでもあるだろうか?中国は対話を重んじており、ASEAN諸国とも対話で問題を解決している。アメリカは中国が軍事的にアメリカに追いつき追い越すのではないかと警戒しているようだが、中国の軍事力など、とてもアメリカには比べようもない。しかし中国は今後も、国家主権と安全を守るために、軍隊の発展を継続していくだろう」

「とても、アメリカには及ばない」と中国政府関係者

たしかにトランプ大統領は2月27日、政権初の予算案で国防費を9%増額する方針を明らかにした。それによれば、2017年度のアメリカの国防費は約5500億ドル(約60兆円)になるだろうとのこと。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ロ、エクソンの「サハリン1」権益売却期限を1年延長

ビジネス

NY外為市場=円が小幅上昇、介入に警戒感

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P最高値、ナイキやマイクロ

ワールド

ウクライナ紛争は26年に終結、ロシア人の過半数が想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中