最新記事

アメリカ政治

アゼルバイジャンのトランプ・ホテルは利益相反の巣

2017年3月8日(水)09時46分
ロビー・グラマー

バクーのホテルは開業のめどが立たない(写真は昨年10月、ワシントンで開業したホテル) Gary Cameron-REUTERS

<汚職にまみれたアゼルバイジャンでの取引は、トランプ・ホテルを含めて丸ごとレッドカードの可能性が高い>

大統領選中も大統領就任後も、ドナルド・トランプと切っても切り離せない疑惑の1つが大統領職とビジネスの利益相反問題だ。米誌ニューヨーカーは最新号で、これまでトランプが行った取引の中で倫理的に最もグレーで、トランプ一族が経営する不動産会社「トランプ・オーガニゼーション」が刑事訴追されかねない汚点を取り上げた。

その内容は、アゼルバイジャンのホテルの建設やマネジメント契約をめぐり、トランプ・オーガニゼーションが汚職まみれの財閥と手を結んだというもの。しかもその財閥は、イラン革命防衛隊と親密な関係を持つ一族とつながっているという。

【参考記事】親馬鹿トランプ、イバンカをかばい「利益相反」体質さらす

アゼルバイジャンの首都バクーにある「トランプ・インターナショナル・ホテル&タワー・バクー」は2008年に事業計画が決まり、建物はほぼ完成したが、一度も公開はされていない。ホテルの建設にあたりトランプ・オーガニゼーションは、当時のアゼルバイジャン交通相で地元の有力財閥を率いるジヤ・ママドフと手を組んだ。立地が悪いなど、事業には問題が山積みだった。だが、しばしば採算度外視のビジネスがまかり通るアゼルバイジャンでは、ともかく事業が進んでしまう。

イラン革命防衛隊と関与?

ニューヨーカーの記事によればママドフは、数年前に内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した米国務省の外交公電の中で「汚職が蔓延するアゼルバイジャンでもとりわけ汚職にまみれている」と言われた人物。ママドフとその家族は、イランの著名な実業家一族であるダルビッシュ家との親密な関係でも知られる。そのダルビッシュ家が経営するのが、イラン国外でのテロを支援し、麻薬取引や資金洗浄などの違法活動に関与したとして米政府が非難しているイラン革命防衛隊系の事業会社だ。

【参考記事】ウィキリークス新暴露の衝撃度


ニューヨーカーは、バクーのホテル事業を通じて、トランプ・オーガニゼーションが海外腐敗行為防止法(FCPA)を含む連邦法に違反した可能性を指摘する。汚職が日常茶飯事のアゼルバイジャンで、トランプは事業に乗り出す前の正当な注意義務を怠り、その法的責任を負う可能性があるという。

「バクーでの全ての取引が、とてつもないレッドカードに相当する。外国政府の高官やその一族が直接関与したうえ、彼らはイラン革命防衛軍とつながっていた。汚職の危険を示す兆候がこれほどあからさまなケースはない」と、FCPAの専門家で米ジョージ・ワシントン大学法科大学院の部長補佐ジェシカ・ティリップマンは語った。

【参考記事】弁護士グループがトランプ大統領を提訴、外国金脈を暴けるか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中