最新記事

アメリカ政治

弁護士グループがトランプ大統領を提訴、外国金脈を暴けるか

2017年1月24日(火)18時10分
マシュー・クーパー

Shannon Stapleton-REUTERS

<著名な弁護士グループが憲法違反でトランプの提訴に踏み切った。納税報告書も出さず事業売却もしない初めての大統領の金脈を暴く突破口になるか> (写真は、1月11日に大統領選の勝利演説を終えたトランプと子供たち。わざわざ積み上げられた手前の書類は、息子たちに経営権を渡すためにトランプが署名したものだという。左から次男エリック、長女イバンカ、トランプ、長男ドナルド・トランプ・ジュニア)

 ドナルド・トランプ大統領の批判者たちが、トランプを訴える準備を進めていることは驚くに値しない。1月23日の提訴もそうだ。トランプが所有するホテルなどの事業で外国政府から利益を得ているのは利益相反で憲法違反に当たるとして、有力弁護士や法学者のグループが提訴した。もっともな訴えだが、訴訟に勝つのは困難そうだ。

 アメリカの大統領が納税申告書の提出を拒み、自らの事業を売却もしない──前例のない事態だ。大統領に就任した20日、トランプはトランプ・オーガニゼーションの経営権を2人の息子(ドナルド・ジュニアとエリック)に託すと発表したが、共同経営などを通じて巨大な「帝国」を今もトランプが所有していることに変わりはない。トランプは、これらの資産を処分して利益相反を回避するための実質的な取り組みを何も行っていないのだ。

【参考記事】トランプ最大のアキレス腱「利益相反」問題に解決策はあるのか

民主主義を守るため

 リチャード・ニクソン以降、すべての大統領は納税申告書を開示してきた。だがトランプ大統領は、米内国歳入庁(IRS)が会計監査を行っていることを理由に拒否してきた。だが本当に監査が行われているのか、IRSからの監査通知書など簡単な証拠すら提示していない。たとえ監査を受けていようと、トランプ大統領には自身の納税申告書を開示する自由はあるはずだ――依頼人に対して開示しないよう助言する弁護士も、一部にはいるだろうが。

【参考記事】前代未聞のトランプ節税問題と奇妙な擁護論

 ところがケリーアン・コンウェイ大統領顧問は1月22日、監査を受けていようと受けていまいと、トランプ大統領は納税申告書を開示しないと発表した。国民はこの話題に関心を持っていない、と言うのだ。ピュー・リサーチ・センターが行った世論調査では、回答者の60パーセントが納税申告書の開示を望んでいるのに。翌日ホワイトハウスは、方針を再び転換し、監査が完了したのちに、トランプは納税申告書を開示する意向であるとした。

 外国からの報酬を禁止する憲法の条項にトランプを従わせようとする訴訟も、勝つのは容易ではないだろう。報酬に関する憲法の条項は、大統領に限らずすべての政府関係者に対して、外国企業から利益を得ることを禁じている。この禁止条項は、当時まだ生まれたばかりだったアメリカ民主主義の土台が、外国勢力のカネで転覆されるかもしれないという建国者たちの懸念を反映している。大統領になれるのはアメリカで生まれたアメリカ人に限る、という条項もそうした名残のひとつだ。

【参考記事】「トランプはロシアに弱みを握られている」は誤報なのか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏との会談「前向き」 防空

ワールド

豪、中国軍機の照明弾投下に抗議 南シナ海哨戒中に「

ワールド

ルーブル美術館強盗、仏国内で批判 政府が警備巡り緊

ビジネス

米韓の通貨スワップ協議せず、貿易合意に不適切=韓国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 7
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中