最新記事

BOOKS

身近な「サイコパス」から身を守るための知識

2017年2月27日(月)20時11分
印南敦史(作家、書評家)

Newsweek Japan

<職場でも恋愛でも――。人の弱みにつけこみ、コントロールする技術をもつサイコパス。『サイコパス』はその謎を脳科学から解き明かす>

サイコパス』(中野信子著、文春新書)は、脳科学者である著者が、なにかとわかりにくい部分の多い「サイコパス」の実態を、脳科学的な観点から明かした新書。

サイコパスとは何か。謎も多いだけに、いろいろと知識を身につけておきたいところだ。しかし、多くの人がまず知りたいのは、相手がサイコパスであるか否かを判断する基準ではないだろうか? そこで役に立ちそうなのが、著者が「はじめに 脳科学が明らかにする『あなたの隣のサイコパス』」で挙げているサイコパスの主だった特徴である。


・外見や語りが過剰に魅力的で、ナルシスティックである。
・恐怖や不安、緊張を感じにくく、大舞台でも堂々として見える。
・多くの人が倫理的な理由でためらいを感じたり危険に思ってやらなかったりすることも平然と行うため、挑戦的で勇気があるように見える。
・お世辞がうまい人ころがしで、有力者を味方につけていたり、崇拝者のような取り巻きがいたりする。
・常習的にウソをつき、話を盛る。自分をよく見せようと、主張をコロコロと変える。
・ビッグマウスだが飽きっぽく、物事を継続したり、最後までやり遂げることは苦手。
・傲慢で尊大であり、批判されても折れない、懲りない。
・つきあう人間がしばしば変わり、つきあいがなくなった相手のことを悪く言う。
・人当たりはよいが、他者に対する共感性そのものが低い。(7~8ページ「はじめに 脳科学が明らかにする『あなたの隣のサイコパス』」より)

こうした特徴を確認すると、「ああ、あの人はサイコパスっぽいな」と誰かのことを思い浮かべる人も少なくないはず。つまりはそれほど、サイコパスは身近な存在だということである。

ちなみにサイコパスに対し、飢餓に苦しむ人などの悲惨な画像を見せても、感情と関連する部分の脳は活性化しないのだそうだ。つまりはそれが、「共感性が低い」といわれるゆえんだろう。


 アメリカの国立精神衛生研究所(NIMH)に所属する著名な精神医学者ジェームズ・ブレア、デレク・ミッチェル、カリナ・ブレアの3人の著書である『サイコパス 冷淡な脳』によれば、他者の悲しみを目のあたりにしたとき、自律神経(循環器、消化器、呼吸器などの活動を調整するために、24時間働き続けている神経)の反応が、サイコパスは一般人よりも弱いのです。また、表情や音声から他者の感情を読み取る実験をおこなうと、「怒り」「喜び」「驚き」といった感情については一般人と同程度に読み取れるものの、「恐怖」「悲しみ」を察する能力には欠けていることがわかっています。(47ページより)

共感性が低いにもかかわらず、サイコパスが他者を騙して利用したり、詐欺を働くことができるのには理由がある。サイコパスは、相手の目つきや表情から、その人が置かれている状況を読み取る才能が際立っているというのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ相場が安定し経済に悪影響与えないよう望む=E

ビジネス

米製薬メルク、肺疾患治療薬の英ベローナを買収 10

ワールド

トランプ氏のモスクワ爆撃発言報道、ロシア大統領府「

ワールド

ロシアが無人機728機でウクライナ攻撃、米の兵器追
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    【クイズ】 現存する「世界最古の教育機関」はどれ?
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中