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広がる仮想通貨 本格利用に「差し押さえ」など法的な穴

2017年2月26日(日)18時08分

差し押さえは、期限が来ても債務の履行がない場合、債権者が権利行使をするための最終手段。

例えば、貸したお金の返済がなく、貸し手が訴え、返済を求める判決が出たケースでは、借り手が返済しなければ、貸し手は裁判所に対し、借り手が財産を自由に使えないように求めることが可能だ。

これが差し押さえで、裁判所は債務者の保有財産を強制的にお金に換え、債権者の権利を実現する。

しかし、現在の法律で国が差し押さえることができるのは、銀行預金や給与、不動産、自家用車といった財産で、仮想通貨は対象として法律に明記されていない。

債務者は、開示請求が来れば民事執行法により自分の財産を開示しなくてはならない。開示することで、財産の所在や規模が明らかになり、国の差し押さえが可能になる。

民事執行法にもとづき、債権者は仮想通貨を管理するIDやパスワードを開示するよう請求できるが、それ以上は踏み込めない。

みずほ中央法律事務所の三平聡史代表弁護士は、破産のリスクが高まった個人や企業が自分の財産をビットコインに換えてしまえば、債権者は回収できず「法的にお手上げ状態」だと指摘した。

仮想通貨、課税や会計なども未整備

差し押さえ以外の法的対応や、課税、会計処理、監査基準などの分野でも、仮想通貨の扱いは整備されていない。

法律面では、仮想通貨取引所に対して顧客資産の分別管理が義務づけられるが、仮想通貨を法務局に供託することはできない。

また、仮想通貨を貸し付けても、利息制限法や貸金業法は適用されない。仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引は、金融商品取引法上のデリバティブ取引には該当しない。

課税面では、仮想通貨を譲渡する際の消費税を非課税とすることが2017年度の税制改正大綱に盛り込まれたが、積み残しの問題が山積している。

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