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貧困

教育で貧困の連鎖を断ち切る、カンボジア出稼ぎ家庭の子ども支援

2017年2月15日(水)16時40分
浜田敬子(AERA前編集長)

親族から少女がレイプされる

出稼ぎに関しては教育以外にも深刻な問題がある。出稼ぎ先や残されたふるさとで、性被害に遭うケースが多いのだ。ライの村では3年ほど前こんな事件があった。未明の午前4時、一本の電話がかかってきた。出稼ぎ中の親から預かっていた姪(当時7歳)が自分の夫にレイプされた、という女性からのものだった。ライは警察やCCASVAに通報し、その少女を病院に連れて行った。叔父にあたる男性は逃亡したが、時々村に戻ってくるため、少女と母親は報復を恐れて住居を転々としている。

「本当はその少女にも学校を続けてあげさせたい。シェルターに入ることも提案した。だが、娘がそういう被害にあったことを恥じている母親は学校を辞めさせた。今は時々村に戻って来るが、継続的な支援は難しい状況だ」

残された少女たちが性被害に遭うだけでなく、出稼ぎ中に家族からレイプされたり暴力を振るわれたりするケースもあるという。貧困のひずみで苦しむのは子どもたちだ。

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子どもの問題も暴力も背景には貧困問題がある。ハン・シロは村の経済発展のために農業改革や起業支援なども行っている Kimlong Meng/Plan International

別の村のリーダー、ハン・シロはこうした貧困の連鎖を断ち切る活動をしている。出稼ぎで得た収入で贅沢をするのでなく、その収入を元手に地元で商売を始めることなどを推奨している。シロは村で奨学金をつくり、学力のある子どもたちに大学進学の道筋もつけている。

「その子どもたちが大学卒業後、村のために働いてくれることを願っています」

プランが支援している途上国の少女たちの経済状況や教育環境は日本の人々が想像できないほど過酷だ。だが、相対的な貧困状態にある子どもが6人に1人という状況になった日本では、「遠い国の話」ではない。カンボジアの場合、「おせっかい」と感じられるほどに地元のNGOや村のリーダーが家庭に介入していた。親だけに任せず、地元の人々など「第三者の大人」が関わらなければ、子どもたちの未来は開けないことを今回の取材であらためて感じた。

【執筆者】
浜田敬子(AERA前編集長)

1989年朝日新聞社入社。99年からAERA編集部。女性の生き方や雇用問題、国際ニュースを中心に取材。2014年から編集長。16年5月から朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして「働くと子育てを考えるWOKRO!」「Change Working Style」などのプロジェクトを立ち上げる。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の水曜コメンテーター。

◇プラン・インターナショナル◇
子どもの権利を推進し、貧困や差別のない社会を実現するために世界70カ国以上で活動する国際NGO。「Because I am a Girl」キャンペーンを通じて、女性というだけで様々な困難に直面する途上国の女の子たちの問題を訴え、生きていく力を身につけさせ、途上国の貧困が軽減されることを目指している。(www.plan-international.jp

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