最新記事

自動車

シボレー・カマロが帰ってきた!

2017年2月15日(水)10時45分
ゴゴ・リッズ

カマロは半世紀の間にどん底も経験した。デビュー年の売り上げはマスタングの半分に届かなかったが、売り上げ競争よりもっと大きな名誉を手にした。同年の自動車レース、インディ500のペースカーに選ばれたのだ。77年には、初めて売り上げでマスタングを抜いた。

しかし、80年代後半になると徐々に人気に陰りが見え始める。92年にはカリフォルニア州バンナイズの工場が閉鎖され、カナダに生産が移された。売り上げ低迷はその後も続き、02年にはついに生産が打ち切られる。

それでも、カマロは帰ってきた。カムバックのきっかけになったのは、07年のSFアクション映画『トランスフォーマー』だった。巨大ロボットが自動車に変身して戦う映画だ。

監督のマイケル・ベイはシボレーのデザインチームと協力して、黄色いカマロをベースにしたロボット「バンブルビー」を生み出した(バンブルビーの宿敵は、マスタングをベースにした自動車に変身する「悪の警官」ロボットだ)。

映画を機に、それまで超低価格で売買されていた中古の74年型カマロの価格が一挙に跳ね上がった。この人気を背景に、08年第4四半期、第5世代カマロの生産が開始された。

復活した最初の年、早速売り上げでムスタングを上回った。非営利団体の全米保険犯罪局(NICB)の統計によれば、第5世代カマロは09~12年に最もよく盗まれた「スポーティー」な自動車だ。

生産拠点もアメリカに戻ってきた。カナダでの生産は15年に終了し、現在はミシガン州ランシングにあるグランドリバー工場で組み立てられている。

ただし、この工場は最近800人をレイオフした。幹部たちは季節的な売り上げ減を理由として挙げるが、エンジニア部門責任者のアル・オッペンハイザーによれば、大統領選の影響もあるという。「経済の先行きに不安を感じているとき、人は高性能車のような新しいオモチャの買い物を控える傾向がある」

【参考記事】アップルがチラ見せした「自動運転車プロジェクト」への欲望

50年後も打倒マスタング

新しいカマロには、007映画も顔負けの機能や装備が満載されている。「ティーンドライバー・モード」は、親が子供の運転時のスピードとオーディオスピーカーの音量をコントロールできるようにする機能だ。

運転記録を残して後で再生する機能を備えたモデルも登場している。「高級レストランの玄関前でキーを預けた際、係員が車を駐車スペースに移動させるときに乱暴な運転をすることを防げる」と、オッペンハイザーは説明する。

近くショールームに登場する新モデルの名前は、「クリプトン」。クリプトンといえば、スーパーマンの力を奪う謎の鉱物の産地だ。なぜ、新モデルにこの名前を付けたのか。

オッペンハイザーは、50年前のエスティーズさながらにライバル意識をむき出しにして言った。「マスタングのパワーを奪う車だからだよ」

[2017年2月14日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化

ビジネス

デジタルユーロ、大規模な混乱に備え必要=チポローネ

ビジネス

スウェーデン、食品の付加価値税を半減へ 景気刺激へ

ワールド

アングル:中ロとの連帯示すインド、冷え込むトランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中