最新記事

北朝鮮

トランプ政権、北朝鮮ミサイル発射の制裁に手詰まり感

2017年2月14日(火)08時55分

2月12日、トランプ米大統領(写真)は選挙期間中、北朝鮮に対してより強硬な態度を取ると表明していたが、前週末の弾道ミサイル発射後の公的な反応は抑制されたトーンにとどまった。ワシントンで10日撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

トランプ米大統領は選挙期間中、北朝鮮に対してより強硬な態度を取ると表明していたが、前週末の弾道ミサイル発射後の公的な反応は抑制されたトーンにとどまった。これで浮き彫りになったのは、米国が北朝鮮の核開発を止める有効な手段をほとんど持ち合わせていないという事実だ。

トランプ政権内では現在、北朝鮮への追加制裁からミサイル防衛力の強化を見せつけるといった措置まで、いくつかが検討されている。しかしどれもオバマ前政権が策定した選択肢の二番せんじの域を出ていないように見える。

歴代の米政権が試みてきた中国を通じて北朝鮮の行動を抑えるというやり方も、はかばかしい効果を発揮していない。

より思い切った対策としては北朝鮮への直接的な武力行使、もしくは直接交渉が考えられる。とはいえ武力行使は周辺地域を巻き込む戦争に発展するリスクがあり、交渉は北朝鮮の思うつぼであることから、両対策とも現実的な検討課題にはならず、成功も覚束ないだろう。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア専門家、ボニー・グレーザー氏は「トランプ氏が選べる手段は限られている」と指摘した。

トランプ氏は北朝鮮のミサイル発射を受けて安倍晋三首相との共同記者発表に応じ、「私が皆さんに完全に理解してもらいたいのは、米国が偉大な同盟国である日本を100%支持するということだ」とだけ発言。北朝鮮への直接的な言及はなく、具体的な報復計画も示さなかった。

この問題についてトランプ氏がいつものようにイッターに強い口調のメッセージを投稿する可能性は残されている。しかし一部の専門家は、比較的おとなしい発言をしているのは、トランプ氏に北朝鮮の誘いに乗って実行が難しい対抗措置を安易に発表しないよう、側近が必死に説得している表れではないかとの見方を示した。

中国の出方

オバマ前政権は北朝鮮に対して、段階的に制裁と外交圧力を強めつつ、実質的には同国指導部の出方を見守る「戦略的な忍耐」と呼ぶ政策を遂行していた。これに対してトランプ氏側近は、現政権はもっと攻めの姿勢を取ると話しているものの、実際にどうするかはあいまいなままだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

デギンドスECB副総裁、利下げ継続に楽観的

ワールド

OPECプラス8カ国が3日会合、前倒しで開催 6月

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ワールド

ロ凍結資金30億ユーロ、投資家に分配計画 ユーロク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中