最新記事

テロ

昨日起こったテロすべての源流はアレッポにある

2016年12月21日(水)16時00分
ジャニーン・ディ・ジョバンニ

 一方、欧州では、アレッポ陥落後の最初のおそろしい波紋がリアルタイムで広がっている。それはベルリンのクリスマスマーケットへのトラック攻撃という形をとり、12人が死亡した。なぜドイツなのか? アンゲラ・メルケル首相は、欧州の大部分が排外主義に傾いているこの時代に、難民保護の砦になってきた。

【参考記事】ベルリン、トラック突入テロ「トラックは止まろうとしなかった」

 シリア危機の発生後、トルコから国境を越えて欧州へ向かう難民が殺到するなか、ドイツは欧州大陸のほかのどの国よりも多くの難民を受け入れてきた。メルケルは、フランスの極右政党「国民戦線」党首マリーヌ・ルペンなどの右派指導者たちとは対照的に、寛容の精神を訴えてきた。だがそれは逆にドイツの極右勢力を勢いづかせ、メルケルは最近、人権擁護の姿勢を後退させている。顔を完全に覆うタイプのブルカの着用禁止を支持したうえ、難民に広く門戸を開いてきたこれまでの「開放政策」は今後とらないと約束した。当然ながら、それはイスラム過激派の怒りを買った。

1つの町がまっ平らに

 だが、19日の混乱と死は、さらなる広がりを見せた。トルコでは、非番の警察官がロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使を射殺した。容疑者は警官隊に射殺される前、「アレッポを忘れるな、シリアを忘れるな」と叫んだ。アレッポで多くの民間人を殺したロシアへの報復攻撃とも受け取れる。ドイツのトラック突入テロと同じく、ローンウルフ(一匹狼)による犯行か、ISIS(自称イスラム国)またはアルカイダの下部組織による犯行か不明のままだ。

【参考記事】トルコのロシア大使が射殺される。犯人は「アレッポを忘れるな」と叫ぶ

 こうした攻撃は、すぐには終わらないだろう。だが、アレッポがロシアの空爆で徹底的に破壊され、まっ平らの駐車場さながらの姿にされてしまったこと、そしてその間世界のほとんどが沈黙していたことは心に留めるべきだ。そこで生きる人たちを見捨てたのは我々はなのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米雇用統計予想下回る 円は

ワールド

米、ベネズエラと連携し石油タンカー拿捕=トランプ氏

ビジネス

米国株式市場=S&P500過去最高値、ブロードコム

ワールド

韓国から無人機新たに飛来、北朝鮮が主張
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「不法移民からアメリカを守る」ICEが市民を射殺、証…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 8
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 8
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 9
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中