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惨劇

ベルリン、トラック突入テロ「トラックは止まろうとしなかった」

2016年12月20日(火)15時40分
ジャック・ムーア

ベルリンの観光名所クリスマスマーケットに突っ込んだトラック Pawel Kopczynski-REUTERS

 イギリス人旅行者のエマ・ラシュトンは、ベルリンのクリスマスマーケットで友人とワインを楽しんでいた。そのとき、1台のトラックが目の前を走り抜けて買い物客に突っ込み、9人が死亡、少なくとも50人が負傷した。

 ラシュトンは本誌に対し、ベルリン中心部にある人気の公共広場「ブライトシャイト」での恐ろしい体験を語ってくれた。ブライトシャイトではクリスマスマーケットが開かれており、中央の小道沿いに立ち並ぶ木造の露店の裏にあるエリアに、ラシュトンは友人と座っていた。トラックは時速40マイル(約64km)でラシュトンのおよそ8フィート(約2.4m)前方を通過し、木造の掘っ建て小屋に激突。あたりは修羅場と化した。

1週間前のクリスマスマーケット




トラックが突っ込んだ後


 ホテルに戻ったラシュトンは電話での取材に応え、「トラックは止まろうとしなかった」と語った。これに先立ち彼女はツイッターで、自身が無事であることを伝えていた。

 ラシュトンと友人は、事件の6時間前にベルリンに着いたばかりだった。カイザー・ヴィルヘルム記念教会の近くで開かれているクリスマスマーケットに向かった2人は、カリーヴルスト(カレーソーセージ)を食べ、グリューワインを飲んでいた。

2メートル先で露店に突入

「わたしたちは腰を下して、ワインを飲んでいた。友人が『そろそろ行く?』と言ったけど、わたしは『ここはとても素敵な場所だし、あと2分くらいここにいたい』と思った。すると突然、すごく大きな音がして、上からぶら下がっていたイルミネーションのライトが落ちてきた」。ラシュトンは突入の瞬間をそう振り返っている。

「すぐ目の前で、わたしたちがワインを買った露店が大型トラックに押しつぶされていた。わたしたちから2.5メートルほど離れた場所だったと思う。すぐそばだった」と彼女は続ける。「もし2分早く立ち上がっていたら、わたしたちは大型トラックの進路の先にいたはずだ。想像するとゾッとする」

潰された露店




突っ込んだトラックの正面


 そのトラックは、彼女たちがワインを買った露店を「完全に破壊」したという。「幸いにも、露店のなかにいた人たちは全員、助け出された。同業者が皆で救出していた。ケガを負っていたけれど、歩ける状態で、無事だった」

また次が来るかも?

 トラック衝突のショックでまだ動揺していたものの、ラシュトンと友人はその後どうすべきかを検討した。「また次が来るのか、もう大丈夫なのか、わたしたちには何もわからなかった」

 ラシュトンは家に電話をかけて無事であることを伝えたが、家族はまだニュースを見ていなかった。その後、急いでホテルに戻る道すがら、ラシュトンと友人は十数人の負傷者のそばを通り過ぎた。負傷者たちは「出血したり、泣き叫んでいた。なかには意識がないのか、で横向きに寝かされている人もいた」

 救急車と警察の車両が猛スピードで行き交う傍らで、2人は立ち止まり、クリスマスマーケットに向かうほかの旅行者たちに対して、行かないように忠告した。

【参考記事】【ニーステロ】車が大量殺戮の凶器になるなら、人混みはどこも危ない

 トラックによる破壊をじかに目撃した彼女は、この衝突は事故ではないと強く主張する。「マーケットの両側には2本の幹線道路が走っているが、トラックが幹線道路を外れてあの小道に突入したのが事故だったとはとても考えられない。あれは事故ではない」

 ラシュトンは「九死に一生を得た」ような気がすると話しながらも、翌日以降も予定どおりベルリンで過ごすつもりだ。「もしこれがテロなら、テロリストの望みはわれわれが恐怖におののき、行動を変えることだ」とラシュトンは語る。「そのような者たちに屈しないために、このまま日常を送り続けるしかない」

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