最新記事

詐欺

米国で被害拡大、インド発「振り込め詐欺」の手口

2016年12月5日(月)15時27分

11月30日、米司法省によれば、2013年以来続いているインドの偽装コールセンターを拠点とする「電話詐欺」被害者は少なくとも1万5000人、被害総額は3億ドル(約343億円)以上に達するという。写真はムンバイ近郊の閉鎖されたコールセンターのあるビルから出てくる警官。10月6日撮影(2016年 ロイター/Danish Siddiqui)

 9月下旬、カリフォルニア州ナショナルシティに住む女性の電話に留守電メッセージが入っていた。「脱税または租税詐欺」に関して米内国歳入庁(IRS)がその女性を調査している、という内容だ。

 仰天した女性は、メッセージに残された番号に電話し、IRS職員を自称する男に、請求された金額の半分に当たる「500ドルなら払える」と告げた。「分割払いなら。一度に全額は払えない」と。

 「本日500ドルの支払いで構わない。それなら大丈夫か」と男は尋ね、弁護士が彼女の口座を調査し、月ごとの分割払い計画を作成することになるが、半分はただちに払わなければならない、と告げた。

 捜査官がロイターに示した会話記録によれば、その男は彼女に、電話をつなげたまま、近所の雑貨店で「iTunes(アイチューンズ)」で使える500ドル分のギフトカードを購入し、「代理人」にカードに記載されているコードを教えるよう指示した。

 こうしてその女性は詐欺に引っかかった。

 米司法省によれば、2013年以来続いている「大規模で複雑な詐欺」の被害者は少なくとも1万5000人、被害総額は3億ドル(約343億円)以上に達するという。司法省は先月、インドと米国の56人に対し、大陪審告訴を起こした。容疑は、インドに所在する偽装コールセンターを拠点とする「電話詐欺」である。

 米国内で20人が逮捕された一方、インド当局は10月、ムンバイ市郊外のターネーにある3カ所の施設に強制捜索を行い、75人を逮捕した。起訴内容は、共謀による身分詐称、米国公務員へのなりすまし、有線通信の不正行為、資金洗浄などである。

 インド警察は、サガル・タッカーという人物を探しているという。

 「シャギー」とも呼ばれる30代前半の男性が詐欺の主犯格だと同警察では考えている。この男は米司法省が指名手配している容疑者のなかにも含まれている。ロイターはコメントを求めてタッカーへの接触を試みたが成功しなかった。彼が弁護士に依頼している様子は見られず、警察ではタッカーが先月ドバイに逃亡したと考えている。

 ターネー警察署のパラグ・マネーレ副署長は、「タッカーに対するレッド・ノーティスを発行する手続を完了しようと努めている」とロイターに語った。「レッド・ノーティス」とは、国際刑事警察機構(インターポール)による逮捕令状である。

 警察によれば、タッカーは詐欺行為で得た利益によって贅沢な生活を送っており、5つ星ホテルを頻繁に利用し、高級車を乗り回しているという。ガールフレンドに2500万ルピー(約4180万円)相当の高級車アウディR8をプレゼントしたほどだ。

 捜査に参加しているFBIはコメントを拒否した。米司法省もコメントしなかった。レスリー・コールドウェル司法次官補は先週、米国はインド国内の容疑者の送還を求めると表明し、同様の詐欺行為に関与している者は実刑判決を受ける可能性があると警告している。

 米司法省による起訴以前に行われた取材を通じて、警察、容疑者、そしてインドのコールセンター従業員らは、詐欺のしくみについてロイターに語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、戦争継続へ有力実業家に資金要請報道 自

ワールド

訂正-トランプ氏のガザ和平案、8カ月でハマス武装解

ワールド

米上院、国土安全保障省への資金法案可決 ICEは除

ワールド

中国、米通商慣行の対抗調査開始 即時の報復回避
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 4
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 7
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 8
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中