最新記事

和平

【写真特集】ノーベル平和賞「52年間内戦」コロンビアの今

2016年12月10日(土)07時05分
Photographs by Mads Nissen

コロンビア革命軍(FARC)の潜伏拠点フレンテ51にて。恋人同士のダビド・エスピナ(23、手前)とアンドリ・リベラ(31) ※写真はすべてノーベル平和賞展示会「HOPE OVER FEAR」より Photographs by Mads Nissen for Nobel Peace Center/Panos

<12月10日、ノーベル平和賞を授与されるコロンビアのサントス大統領。左翼ゲリラFARCとの和平推進が受賞理由だ。この国は52年間、内戦にむしばまれてきた>

 12月10日の午後1時(現地時間、日本では午後9時)から、ノルウェーのオスロでノーベル平和賞の授賞式が行われる。今年の受賞者はフアン・マヌエル・サントス――といっても、ピンとこない人が少なくないかもしれない。

 コロンビアの現職大統領である。2009年のバラク・オバマ(米大統領として「核兵器のない世界」を提唱)、2010年の劉暁波(中国の獄中の人権活動家)、2014年のマララ・ユサフザイ(パキスタンでタリバンに立ち向かった少女)といった過去の受賞者に比べ、確かに知名度に劣るところはあるかもしれない。だがサントス大統領は、粘り強い交渉の末、52年にも及んだ同国の内戦を終わらせた人物だ。

「中南米におけるベルリンの壁崩壊」とも形容されるほどのニュースが伝えられたのは、8月だった。コロンビアでは1964年から左翼ゲリラのコロンビア革命軍(FARC)と政府軍との戦闘が続き、推定22万人の死者と数万人の行方不明者を出していた。2010年に大統領に就任したサントスは、2012年にFARCとの和平交渉を開始、4年をかけ、ついに最終合意に達した。

 9月26日、同国北部のカルタヘナで和平合意文書の署名式典が開かれた。交渉を仲介したキューバのラウル・カストロ議長や、アメリカのジョン・ケリー国務長官、国連の潘基文事務総長ら各国要人が出席。そして10月2日、和平合意の是非を問う国民投票が行われた。

 結果はまさかの否決。反対が50.21%、賛成が49.78%で、反対票がわずかに上回った。テロや誘拐を繰り返したゲリラに対する国民の怒りが根強かったためとされる。これで和平合意の行方が不透明となったが、そこに発表されたのがサントスへのノーベル平和賞授与だった。10月7日のことだ。

tkyphoto161210-2b.jpg

FARCの潜伏拠点フレンテ51にて。FARCで14年間活動してきたエステバン・パルド(38、手に紙を持った人物)ら

tkyphoto161210-3.jpg

コロンビア大統領官邸にて。サントス大統領(中央)と農民団体などの代表者が和平合意について対話

tkyphoto161210-4.jpg

コロンビア大統領官邸にて。平和協議会メンバーが集まり、サントス大統領(中央)に和平合意への支持を表明

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 6
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 7
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 8
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中