最新記事

キャリア

ナチス暗号解読の地に、イギリスの暗号解読者養成学校が開校

2016年11月25日(金)16時00分
アンソニー・カスバートソン

暗号解読者養成にはぴったりのブレッチリー・パーク WIKIMEDIA COMMONS

<ベネディクト・カンバーバッチの映画でも有名になった第2次大戦中の連合軍の暗号解読施設を70年ぶりに学校としてオープン。天才少年たちを集めてサイバーセキュリティの戦士に育て上げる>

 第二次世界大戦中、イギリスのブレッチリー・パーク。ベネディクト・カンバーバッチ主演の『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』にも描かれた数学者アラン・チューリングらのチームによって、ナチスドイツの暗号エニグマを解読し極秘作戦を見破る拠点として使用されてから70年以上が経過した。いまその門を、新世代の暗号解読者が再びくぐる。

 バッキンガムシャー(州)にある同所で2018年、「ナショナル・カレッジ・オブ・サイバーセキュリティー」が開校。サイバーセキュリティーに関する技能を、300人にのぼる16~19歳の十代たちに教える予定なのだ。

【参考記事】スノーデンが暴いた米英の「特別な関係」、さらに深まる

 学費は無料で、入学対象者は一般教育修了上級レベルを目指して勉強する、「才能に恵まれた」生徒たちだ。

 この取り組みを率いるのは、新たに組織された非営利団体「キューファロ」(Qufaro)。同団体は、イギリスのサイバー機能を向上させると同時に、かつてチューリングの功績もあって有名になったブレッチリー・パークの認知度をさらに高めることも目指している。

国を守るキャリア

 キューファロ代表のアリスター・マクウィルソンは、「イギリスのサイバー教育およびイノベーションの体制は、複雑でまとまりがなく不完全だ。われわれは、重要な才能を一世代ぶん、丸ごと失う危険にさらされている」と語る。

「サイバー分野でキャリアを築くことに興味がある者たちにとって、現在のキャリアパスは、それぞれ優れてはいるがバラバラな取り組みで一杯だ。真に統合された、学習とサポートのシステムが提供されていない」

 サイバー攻撃に対するイギリスの脆弱性は先日、財務相のフィリップ・ハモンドによって浮き彫りにされ、同時にハモンドは、今後5年間で防御力の向上に19億ポンドを投じると発表した。

 ハモンドは10月にロンドンで開かれたイベントのスピーチで、「技術は、われわれの経済に大きなチャンスを与えてくれるが、同時にリスクももたらす」と述べた。「インターネットと、それが依存するインフラに対する信頼は、われわれの経済的未来に欠かせない。その信頼がなければ、デジタルシステム全体への信頼も失われてしまう」

【参考記事】ツイッターを締め出されたISISの御用達アプリ


「われわれには安全なサイバー空間が必要だ。それを実現するには、企業と政府が一丸とならなければならない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中