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じわじわ恐怖感が募る、『ザ・ギフト』は職人芸の心理スリラー

2016年11月8日(火)10時20分
エイミー・ウエスト

 主役の3人はどこにでもいそうな人物。映画が展開するにつれてさまざまな側面を見せるが、3人とも完全な悪役ではない。

 彼らが繰り広げるドラマは一見すると脈絡がないが、実は緻密に計算され尽くしている。最後の最後まで先の読めない展開に、観客はぐいぐい引き込まれていく。

 エジャートンの才能は言うまでもないが、徐々に高まるサスペンスを支える夫婦役の2人の演技も見逃せない。

 ロビン役のホールは『トランセンデンス』や『ザ・タウン』でヒーローの相手役を務めて注目を浴びた。今作では、正体不明の男に戸惑いつつ、夫に次第に不信感を募らせるロビンの心の揺れを繊細に演じている。

 ベイトマンはコメディーで知られる役者だが、誠実そうなうわべに狡猾な顔を隠したサイモンを見事に演じ切った。

 エジャートン演じるゴードはいかにも不器用な男だ。おずおずとした表情で相手の様子をうかがい、言葉に詰まりながら自虐ネタを話すゴードは何とも言えず薄気味悪い。

【参考記事】天使のように美しい少年が恐るべき独裁者へ──「シークレット・オブ・モンスター」

 上映時間108分には不要な場面は1つもない。あらゆる要素が緊迫感を高め、張り詰めた糸は緩むことなく驚きの連続のまま衝撃のラストを迎える。

 難を言えば終盤はやや急ぎ過ぎた感もあるが、中盤まで抑えに抑えた展開だから、いきなり慌ただしくなった感じがするのだろう。映画を見終わってみれば、新人監督の並外れた力量にただただ圧倒されるのみだ。

<映画情報>
THE GIFT
『ザ・ギフト』

監督/ジョエル・エジャートン
主演/ジョエル・エジャートン
   ジェイソン・ベイトマン
   レベッカ・ホール
日本公開中

[2016年11月 8日号掲載]

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