最新記事

中国共産党

六中全会、党風紀是正強化――集団指導体制撤廃の可能性は?

2016年10月24日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 だから第18回党大会で習近平政権が誕生すると、党大会初日に胡錦濤が、最終日に習近平が、それぞれ総書記として「腐敗問題を解決しなければ党が滅び、国が滅ぶ」と、声を張り上げて叫んだのだった。

 習近平政権においては「このままでは一党支配体制は腐敗によって滅びる」という危機感が高まり、また実際に臨界点まで至っていた。だから王岐山を書記とした中共中央紀律検査委員会の権限を強化し、大々的な「腐敗撲滅戦略」に突き進んだのである。

 日本のメディアでは、六中全会で「来年の党大会の人事の駆け引きがあるだろう」とか、「来年の党大会への権力闘争と権力集中への布石」などと六中全会を位置づけている報道が散見される。前者に関しては中央委員会全国大会は投票をして決議するだけで、いわば「ハンコを捺す」会議でしかない。駆け引きは、その前にしっかりなされている。後者に関しては、「中国を高く評価し過ぎている」と言うことができよう。

 習近平政権はいま、権力闘争などをしている場合ではないのである。

 一党支配体制が崩壊するか否かの瀬戸際だ。権力闘争説は、実は、中国がここまでの危機にあることを隠蔽してしまう。これはある意味、中国に利することにもなる。なぜなら、そのように海外メディアが見ている間は、中国にはまだ権力闘争をするだけのゆとりがあり、一党支配崩壊の危機が見破られないという「煙幕」の役割を果たしてくれるからだ。

 六中全会で何がテーマになるかに関しては、庶民に分かりやすいようにするためにイラストで紹介した頁があるので、これをご覧いただきたい。

「新形勢下における党内政治生活に関する若干の準則」の制定に関しては本稿の最後に述べる。

「中国共産党党内監督条例(試行)」の修訂とともに、簡単に言うならば「腐敗は党員、特に党幹部の日常生活の心構えから出てくるもので、ほんのちょっとしたことから私利私欲が芽生えるものだ」ということを説いて、自他ともに監督を強化して腐敗に手をつけないように心掛けよ、ということを謳ったものである。

 これらは、2014年に6回、2015年に1回、2016年に4回と、何度も討議を経て意見調整をして終わっているので、六中全会では票決して「決議されました」というハンコが捺されるだけになっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、バイデン氏のFRB人事巡り調査指示 自

ビジネス

M&A市場は来年も活況、米ゴールドマンCFOが予想

ワールド

米国務省コメント、強固な日米同盟示すもの=中国軍の

ワールド

マスク氏、DOGEは「少し成功」 復帰否定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中