最新記事

中東

イエメン緊迫、米軍のホーシー派攻撃にイラン軍艦が出動

2016年10月14日(金)18時40分
ポール・マクリーリー

イランの駆逐艦アルバンド Davoud Poorsehat/IRNA-REUTERS

<米軍がホーシー派のレーダー拠点をミサイルで攻撃した数時間後に、イランが米軍艦船が航行するアデン湾に艦船を派遣。報復合戦で望まない緊張が高まる恐れも>

 サウジアラビアなどが後押しするハディ大統領派と、イランが支援するイスラム教シーア派系武装組織ホーシー派による内戦が続くイエメンで、米軍も巻き込んだ軍事的緊張が高まっている。

 イラン政府は昨日、米軍艦船が航行作戦を展開しているアフリカ東部イエメン沖のアデン湾に2隻の艦船を派遣したと発表。同早朝には、ホーシー派のレーダー拠点を米軍が巡航ミサイル「トマホーク」で攻撃したばかりだった。

【参考記事】イエメンでも「国境なき医師団」病院に空爆

 イラン革命防衛隊とつながりがあるタスニム通信によると、アデン湾に向かったのは、イラン海軍の駆逐艦「アルバンド」と護衛艦「ブーシェフル」。表向きの理由は「イランの貿易船を海賊行為から守るため」だが、「イエメンの戦争にアメリカが直接介入を決断したのと同じタイミングになった」とも伝えた。

 旧式だが対艦ミサイルやマーク8艦砲など様々なミサイルを装備するイランの「アルバンド」には、米海軍とにらみ合った過去がある。2015年7月にはアデン湾で、米海軍のヘリコプターとミサイル駆逐艦「USSファラガット」の補給船に向けて、ミサイルの発射訓練を行った。その時は武力衝突に至らなかった。

葬儀場空爆で140人死亡

 イランが新たに艦船の派遣を発表したのは、米軍駆逐艦「USSニッツエ」が、イエメンのホーシー派支配地域の海岸沿いにある3か所のレーダー施設をトマホークで攻撃した数時間後のことだ。アメリカ側は、イエメン沖を航行中だった米ミサイル駆逐艦を狙って発射された3発のミサイル攻撃に、それらの施設が関与した、としている。

【参考記事】イエメン内戦で600万人が飢餓に直面

 イエメンでは先週、アメリカの同盟国サウジアラビアが首都サヌアの葬儀場を空爆し140人以上が死亡した。ホーシー派の高官数人も殺害され、サウジアラビアとホーシー派の和平交渉を仲介しようと動いていたことで知られる穏健派も死亡した。米政府は、サウジアラビアの無差別攻撃を受けて空爆支援のあり方を見直す方針を示していた。

【参考記事】石油危機とテロ拡大を招くイエメン政局の混迷

 米国防総省は紛争の関係国に向けて、アメリカにはイエメン内戦に首を突っ込むつもりはないと言った。同時に、米国防総省の報道官ピーター・クックはこう付け加えた。「万一また攻撃を受ければ、再び適切な行動に出る用意がある」

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中