最新記事

金融政策

金融政策の限界が露呈、新たな現実に古い道具

2016年10月7日(金)10時53分

 多くの先進国では、平均寿命が過去半世紀で10─15年延びて80歳を超えた。中銀が生み出したマネーは、長い老後に備えた貯蓄へと流れている。

 経済協力開発機構(OECD)のデータによると、可処分所得に占める貯蓄の割合は着実に増え、スイスでは過去最大の20%、スウェーデンでは16%、ドイツでは10%に達した。

 この3カ国はいずれもマイナス金利政策を実施しているが、狙い通りに支出は増えず、家計はスズメの涙ほどの金利にもかかわらず貯蓄を増やしている。

 クレディ・スイスのウェルスマネジメント戦略責任者、Nannette Hechler Fayd'Herbe氏は「インフレは貨幣的現象であり、中央銀行が直接左右できるという中銀の信念に疑問が投げかけられている」と指摘。「貨幣的現象には違いないが、それ以上に構造的現象であり、人口動態的現象でもあるかもしれないと(中銀は)気付き始めている」と続けた。

生産性

 経済のサービス化に伴い、企業の設備投資も減っている。サービス業はヒトの生産能力という限界があるため、生産性の伸び率は低い。このため賃金も伸びにくく、物価と消費は自ずと抑えられる。

 欧州では、ユーロ圏債務危機以降に生まれた新規雇用の5人に4人がサービス業で、生産性は危機前の水準で停滞している。米国はましだが、それでも生産性伸び率は2009年当時の半分以下に下がり、0.4%前後で推移している。

 現在の支出トレンドは最長10─15年続くと見るエコノミストもいる。これに対し、金融政策が視野に入れるのは通常2、3年先までだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ

ビジネス

日経平均は反発、円安を好感 半導体株高も支え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中