最新記事

フィリピン

親中路線に舵を切り始めた放言ドゥテルテの外交戦略

2016年10月6日(木)09時30分
シャノン・ティエジー

Erik de Castro-REUTERS

<放言大統領ドゥテルテのフィリピンが、中国・ロシアとの「新たな同盟」へ動く? アメリカとの軍事協力は岐路に立たされている>(写真:米軍との合同演習をやめると語ったドゥテルテ大統領)

 フィリピンとアメリカとの合同軍事演習が、今年限りになるかもしれない。フィリピンのドゥテルテ大統領は先月末に訪問先のベトナムで、今月4~12日に予定されている演習が「最後になるだろう」と述べた。ドゥテルテの相次ぐ問題発言にも両国の協力関係は変わらないと強調してきた米当局者に、少なからず衝撃を与えそうだ。

 ドゥテルテは先月中旬にも、南部ミンダナオ島のフィリピン軍基地に駐留して武装勢力の鎮圧に協力している米軍特殊部隊の国外退去を求めた。後に発言を取り消して、「今すぐとは言っていない......南シナ海では彼らが必要だ」と釈明した。

 もっとも、フィリピンと中国が対立している南シナ海の領有権問題で、ドゥテルテが具体的にアメリカの助けを求める発言をしたことはほとんどない。

 攻撃性を強める中国に対抗するため、アキノ前政権はアメリカとの緊密な連携を推し進めた。今年4月には南シナ海の共同哨戒活動に合意したが、6月末に就任したドゥテルテは、参加するつもりはないと公言している。

 ドゥテルテは、中国との紛争は「想像」にすぎないと主張。領有権問題より経済支援の可能性に期待して、中国にラブコールを送っている。

【参考記事】東アジアにおける戦略関係の転換期

 ベトナム訪問の直前には、年内に中国とロシアを訪れ、新たな「同盟関係を構築」すると表明。アメリカと「本気で関係を断つつもりはない」が、「イデオロギーの垣根の向こう側」にいる国との関係も強化していきたいと語った。

首脳会談のタイミング

 驚くまでもなく、中国は歓迎している。「中国とフィリピンが問題を解決するという政治的意欲を持ち続ける限り、両国関係の発展において、乗り越えられない障害はない」と、外務省の陸慷(ルー・カン)報道官は述べている。

 ただし、両国関係の前進は勢いづいていない。そもそもドゥテルテ自身が、外交政策の方針を決め切れないようだ。

 南シナ海問題の調整などのため、ドゥテルテは中国とパイプのあるラモス元大統領を特使に指名。ラモスは8月に香港を非公式に訪れたが、先月末に予定されていた北京訪問は直前に中止。ラモスの側近は、「適切な時期に」訪れるとしている。

 ある情報筋は、大統領のベトナム訪問と重なったから中止したと語り、大統領は「アジア数カ国の訪問を準備している」とする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ大統領と電話会談 米での会談

ワールド

ネクスペリアに離脱の動きと非難、中国の親会社 供給

ビジネス

米国株式市場=5営業日続伸、感謝祭明けで薄商い イ

ワールド

米国務長官、NATO会議欠席へ ウ和平交渉重大局面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中